“SNAP ‘THE ROMAN BATHS’@BATH/UK”       (英国バースの古代ローマ風呂)

【英国にもローマ遺跡があることを知る人は少ない】


ストーンヘンジを後にして、次なる目的地がこのバース(英国)だ。
お風呂(bath)を語源とするこの街だが、ローマ時代の名称はアクアエ・スリス(Aquae Sulis)と呼ばれていた。AD2世紀頃までのローマ帝国時代に造られた大浴場や神殿・寺院も併せ持つ複合施設で有名となった。そして、今でも地下からの熱いミネラルウォーター(温泉)が流れ込んでいるローマ風呂としては世界で2つしか現存していないらしい。その一つがこのバースに存在するのだが、もう一か所はどこだろう。

兎に角、巨大な建造物の「巨大浴場(グレートバス)」やレンガ作りのローマ遺跡を保存状態の良いまま見学出来るのは貴重な機会であり、非常に新鮮で楽しいひと時である。想像と期待を遥かに超えたバースは出来ればここを拠点にして周辺地方も色々と探索したい場所である。18世紀以降、ジョージアン時代には英国上流階級の保養所として再開発・発展したのも頷ける。

【今もローマ時代の温泉が湧き出ていることに驚く】

それにしても2千年前に欧州北端に造られたこのローマン浴場に今もこうして天然の温泉が湧き出ていることに驚く。勿論、英国で唯一の天然温泉地である。ROMAの「カラカラ浴場」の遺跡も過去に見てきたが、今回の「バース大浴場」のようなリアルな光景に現代において接することが出来るのは正に奇跡としか言いようがない。

荘厳なビクトリア朝のレセプションホールで入場券を買い、パーソナルオーディオガイドを借りる。
天井に配置された四季折々のレリーフと巨大なドームに目を引かれる。

まずは2階に相当する「テラス」からグレートバス(巨大浴場)を見下ろす。
このローマ浴場が発掘・整備されてグランドオープニングを迎えたのが1897年のこと。
テラスからの眺めは壮観だが、ここから見えるのは敷地全体の4分の1以下だそうだ。

写真中央奥に見えるのが「バース大聖堂」。

ローマ時代のこの「グレートバス」は巨大な屋根を備えた室内施設であったという。

毎日約100万リットルの温水が湧き出ている。湧き出す源泉は観光客が試しに飲用することも出来る。グレートバスは水深1.6mで意外と深いが衛生観点から中に入ることはできない。周囲四方には階段があり、ベンチや小さなテーブルもある。流石に足湯をする観光客もいないが、ついついそんな誘惑に駆られるのは日本人だけではあるまい。
***
ローマ時代には癒しの力を持つ神である「女神スリスミネルバ」に捧げられた泉の隣に大寺院が建てられた。聖なる泉からのミネラル豊富な水は、ローマ帝国中からの訪問者を引き付ける壮大な浴場を建設することになる。差し詰め、現代のスーパー銭湯のイメージがダブルのだが、荘厳さと言う点では比類なき古代のエンターテイメントスポットだろう。

テラスにはユリウス・シーザーやローマ皇帝・軍人ら合計9体の彫像が並んでいる。

朝晩の気温が下がる時間帯では、水面上に湯気が立ち籠る本物の温泉。

お決まりの時計&靴の構図。

古代ローマ時代「アクアエ・スリス」の衣装をまとったモデル達もムードたっぷり。

美しい廊下だが、2階部分はヴィクトリア朝時代に造られたもの。
敷地内の中心にある聖なる泉には、何千年もの間、46°Cのお湯が沸き出ている。
1790年に発見されたpediment(三角形の切妻)と中央のゴルゴンの頭は一番有名なオブジェだろう。
ギリシア神話のゴルゴンは女性だが、これは立派なヒゲもあるので男性か。
AD1世紀後半の高貴な女性と思しき石像頭部。
当時このヘアースタイルを作る為には数人の専属奴隷を付き添っていたと推測されている。

「女神スリスミネルバ」の金箔のブロンズ彫刻(頭部のみ)。
こちらもバースで発見された最重要クラスのオブジェである。
当時の人々は女神ミネルバを崇拝するために浴場と寺院を訪れたとされる。
「呪いのタブレット」The curse tablets: 
鉛またはピューターのシートに刻まれ、その後丸められて女神ミネルバに投げ込まれた「復讐の願掛け」であり、
その内容は殆どが入浴中の衣類の盗難に関する苦情と復讐を願うものだ。
当時の富裕階層は奴隷を連れているのだが、
一般民衆は入浴中に衣類や所持品を盗まれる事件が多発していることが分かる。

当時のコインの製造年はBC32年からAD274年まで。その精密なデザインには息を呑む。

街中で見つけたOlympus Pen-Fブラックボディには、当時のX-Pro2と共に大いに惹かれた。

市内にある「バース郵便博物館」は小振りだが、その為に逆にとても見易い。
世界初の郵便はバースとロンドン間で始まったことで有名だ。
温泉もあるバースは往時の上流階級のリゾート地であった為に郵便も発達したという。

紀元前2000年から現在までの郵便の歴史とイギリスの郵便ポストの歴史が分かる。

バースの中心地は「アビー・チャーチ・ヤード」という石畳の広々とした広場。
大寺院がそびえたつ姿は圧巻。

(2023/6/5公開)3041

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2023年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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2 Comments

  1. 鈴木隆浩

    ローマの旅(おそらくお仕事の合間のことでしょうが)も羨ましいです。
    私は、アメリカ本土も行ったことがありませんし、ヨーロッパもロンドン以外はないんです。トルコは1週間ほど家族旅行に行ったことがありますが、あとはもっぱらグアムやサイパン、韓国、台湾くらいなんです。イタリアやフランスは憧れる場所です。
    テルマエロマエの映画を観たことがありますが、そのモデルである場所ですかね。
    素晴らしい場所とともに素敵なお写真です。

    1. ゼンマイオヤジ

      いえいえ、これはイタリアの話ではなくて、ストーンヘンジに続く英国バースのレポートです。そしてこの後も『写真の聖地』(英国)へと続きますのでどうぞ引き続きご覧ください。尚、イタリアについてはまだ先になりますが現在シナリオを構築中。インスタグラムでは次回のブログネタ予告もボチボチ行っていますのでそちらもご覧ください。

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