“SNAP ‘Fox Talbot Museum’@Lacok/UK”                   (ハリポタ聖地でフォトウォーク)

聖地巡礼の旅。
南部コッツォルズの旧レイコック修道院。
「ハリーポッターの聖地」とは別に、「写真の聖地」に胸が躍る。

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イングランドのウィルトシャー郡にあるレイコック村は、コッツウォルズの丘陵地帯南部にあり、中世からの面影が色濃く残る場所として有名だ。
英国人が住みたい場所の筆頭格でもあるらしいが、現在では英国保護団体「ナショナル・トラスト」の管理下にあり、電線も見えない昔からの町並みが厳格に維持・管理されている。
近年では映画ハリーポッターのロケ地として一躍脚光浴びている場所でもあり、ハリポタファンにとっては正に「聖地巡礼」の場所であるのだが、そんなことには微塵の興味もない筆者にとってはもう一つの「聖地」としての意味合いが大きい。

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1229年に設立されたレイコック修道院は最終的にタルボット家に引き継がれた。
ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット(1800-1877)。
彼は数学者、科学者、語源学者、植物学者、そして政治家としても有名だが、写真史に興味がある人であれば誰もが知っている「ネガポジ法」考案の父である。彼は1835 年に、光にさらされると比例して暗くなる硝酸銀を染み込ませた紙を使用して、黒白の反転した陰画を固定して印画紙に陽画を焼き付けるというネガポジ式による最初の写真撮影に成功した。このネガポジ法が「カロタイプ」と呼ばれ、これにより複製も容易となる。これが後に商業化され、改良に改良を重ねて19世紀後半にG.イーストマンがロールフィルムを発明し、KODAK社を創立、現代のフィルム産業に至る歴史となる。

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そのタルボットの功績を記念した「タルボット博物館」が修道院を改造して造られている。写真好きにとってはレイコック村は正にもう一つの「聖地巡礼」となるのだ。

レイコック村はどこもこのような中世からの建物が残されている。
言い換えれば、現代の便利さの微塵もないのがレイコックである。

「フォックス・タルボット博物館」は 1 階の一部を占めている。
ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットの生涯と写真生誕の地を称えるもので、
1階に併設されたギャラリーでは様々な写真家の作品展が開催されている。
この日は「アイスランド写真展」が開催されていたのだが、その時の感動が後日、

「次への展開」へと繋がることになるとはこの時点では想像もできなかった。

ウェジウッドといえば「陶器」で有名だが、トーマスはその創業者の息子であり、
写真史においてはタルボット以前の先駆者でもある。
感光性がある化学物質を塗布した材料に像を投影して画像を作った最初の人物として有名となる。
上の写真では紙より感光性が高い白い革が使われていることが分かる。
チャールズ・ドジソンはルイス・キャロルのペンネームで「不思議の国のアリス」を書いたが、
同時に数学者でもあり写真家でもあった。フレデリック・スコット・アーチャーの発明した

湿式コロジオンプロセスをドジソンが積極的に実践したとの説明書きである。
中央上部にある写真は1845年にタルボットが撮影した「カロタイプのネガ」から現像したものだ。
タルボットの愛用したブレゲの懐中時計に言及する人は少ない。
当時、とてつもなく高価であったと思われるが、彼の地位と財力が推測される。

タルボット方式を改良してロールフィルムにして造られたのが後のKODAKフィルムである。

同時開催されていたアイスランド写真展。
この展示見学を契機にアイスランドへの関心が急速に高まることになる。

修道院の前に広がる広い野原は羊の放牧場として活用されている。

レイコック修道院入り口のアーチ。
レイコック修道院の回廊。ホグワーツ魔法魔術学校のロケ地となった。
修道院の中庭。ここも映画のロケで登場する場所。如何にも英国といった面持ちだ。
左が「カメラ・オブスクラ」でカメラの原型。写真の原理による投影像を作る素描補助器具だ。
右が「カメラ・ルシダ」でカメラ・オブスクラの発展形。「大きな箱」が不要で携帯可能とした。
カメラの語源はラテン語で「箱・暗い部屋」だ。写真好きには説明不要。
興味ある方は検索してみてください。

この説明書きが愉快であった。ネガポジ法考案のキッカケとなったのは、1833年の新婚旅行。
彼の奥さんは上記の「カメラ・ルシダ」を使って絵を描くのが上手かったが、
タルボットは上手く描けず、自分の下手さにフラストレーションが溜まっていた。
そしてイタリアのコモ湖にいる時に、自然の光景を紙に写すアイデアが湧いたというのだ。
多才なタルボットの研究分野の名称が投影されている。
タルボットの書斎を再現したような部屋。
気圧計・温度計・湿度計の卓上型。製造年代不明。
1560年6月30日付けの記念プレートがある記録式の気圧計。
気圧とは大気の圧力であり空気の重さである。気圧の変化を利用したのが「高度計」だ。
ハリポタファンには多分、どれもが垂涎の光景ではなかろうか。
この村で有名なパン屋さん。観光客で一杯だった。
”THE RED LION”はジョージアン様式のパブであり宿である。赤いレンガ作りが如何にも中世っぽい。
納屋のような建物も完全保存されている。基本的には外観含めて手を加えることは許されておらず、
全てがナショナル・トラストの管理下にある。

ロンドンから電車やバスを乗り継いでレイコック村までやってくる旅行者もいるが、今回のような日帰りバスツアーでストーンヘンジやバースを効率的に訪問するか、又は日程的に余裕があればバースを宿泊の拠点として、そこからレンタカーや各種ミニツアーでストーンヘンジやレイコック村、そしてコッツォルズの美観丘陵地帯をのんびりと巡るのも良いだろう。都会とは異なる時間の流れの中で、パブやB&B(ベッド&ブレックファスト)も最大限に活用して楽しみたい場所だ。
夜になれば星空の美しさが絶品であることも付け加えておこう。

(2023/6/9公開)3122

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2023年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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2 Comments

  1. 鈴木隆浩

    今回も本当に素敵なところのご紹介ですね。
    それにtommyさんの博識も本当にすばらしいです。
    いろんなことを深く研究したりされてますね。
    前回のブログも私はてっきりイタリアかと思ったら、ちゃんと「イギリス」と
    書いてあるのに大変失礼いたしました。
    今日、また拙い動画を配信いたしましたが、次回あたりは自転車使って、
    フォトリングなんて考えてます。
    なかなかネタも見出すのが難しいものですね。

    1. ゼンマイオヤジ

      自転車のフォトリングって興味津々です。ハーレー動画も拝見したいところです。とは言え、これからの猛暑を考えるとフォトウォークさえもしんどいですネ。安全第一で新ネタをお待ちしています。

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