『ライカM11 ”SUNNY 16 RULE”で撮る』

【M11の露出がAE-AUTO撮影で暴れる】

既出「ライカM11、3つの難点」でも触れているが、AUTO撮影(=絞り優先AE)では中々思うように露出を操れないケースがある。M11ではF値設定は常時手動となる為、AUTOに相当する部分はISOとSS(シャッタースピード)のプログラムになる訳だが、被写体の明暗部分が大きく分かれる場合には露出が暴れることがままある。「ライカでは良くあることよ」という声も聞くが、それは一旦棚に上げたい。

例えばスマホであれば画像全体の露出は常にバランス良く処理される。コンデジも同様、国産一眼でも極端な色潰れや強コントラストは殆ど発生しない。しかし、M11の画像ではそうした他社製の露出とは根本的に異なるアルゴリズムが存在するのではあるまいかと薄々感じている。先日の最新FW1.6.1で少しは改善されたはずと思いたいが、残念ながらその結果を実感することは未だ出来ていない。

【具体的な例をX-Pro3の撮影画像と比較してみた】

両者ともに多点(マルチ)測光・絞り優先AE・EV補正±0、
M11(標準カラーモード)・X-Pro3(Proviaモード)、
レンズはM11(Nokton40mmF1.4SC)、X-Pro3(35mm=換算53mmF1.4)

両者のSSとISOのアルゴリズムの違いが興味深い。

M11 (F8、1/160、ISO160)
X-Pro3 (F8、1/240、ISO400)
M11 (F5.6、 1/750、 ISO64)
露出破綻が顕著の典型例。丸で「ハイライト重点測光」のようだ。
上半分の空の明るさに合わせた露出でISO64になったのか?SS1/750では当然の結果だ。
X-Pro3 (F5.6、 1/600、 ISO400)
M11 (F2、1/180、ISO64)
X-Pro3 (F2、1/1100、ISO400)
M11 (F16、1/180、ISO250)
X-Pro3 (F16、1/160、ISO400)

【電子玉手箱こそがM11とX-Pro3の真骨頂】

M11のベース感度がISO64になったことに伴う影響だと思われるが、上記サンプル画像の全てでM11のISO 感度がX-Pro3より低く設定されるのが面白い。M11の露出は苦みのあるエスプレッソのようでX-Pro3は香りを楽しむレギュラーコーヒーというところか。

色々考えるうちにこれはライカの戦略ではないかとも邪推している。
即ち、AE撮影の限界を悟っているライカとしては、暴れる露出を逆手に取ってユーザーにAUTO撮影を諦めさせてマニュアル撮影へと仕向ける「誘導作戦」を展開しているのではなかろうか、と。「最初からマニュアルで撮ればいいではないか」「ライトルームで調整すればいいこと」という意見もあろうが、それもまた本件の主題から外れるので棚に上げる。

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冗談はさておき、ミラーレス撮影ではこれから撮る画像がEVFや背面モニター上で事前に確認できる。それを見てシャッターを切ったり、撮るのを思いとどまったり、はたまた惰性で撮る訳だ。しかしM11のレンジファインダーやX-Pro3の光学ファインダーを通して撮る段階では撮影画像が分からない。あくまで自分の脳内画像(イメージ)を頼りにシャッターを切る。その後に結果を確認するという「高価な電子玉手箱」と化す訳であり、それが本来の姿だと考えている。だから意図的なノールック撮影は別として、個人的には背面モニターを見ながらの「ライブビュー撮影」のスタイルにはどうしても抵抗感を覚える。

モニターを見ながらEV 調整するのであればLUMIX GM1やOlympus Penと同じだろう。ノクチルクスの開放撮影で極端に薄いピントを合わせる場合やレンジファインダーではピントが合わない近接撮影であれば兎も角、スマホ撮影スタイルと同様な背面モニターで常時ライブビュー撮影するのは本意ではない。
基本は全てレンジファインダーで撮りたいというのが願望であり、マイスタイルであり続けたい。その為にM11を手にしたのだから。

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ISO/SS/F値の「三位一体AUTO」ではないM11の「絞り優先AUTO撮影」でどうしたら適正EV値を得られるのだろうかと未だに試行錯誤を繰り返しているのだが、そもそも自分にとっての「適正露出」とは何か。そこで箸休めとして初心に戻り、今回は「SUNNY 16 RULE註)」で撮影してみた。

註)晴れの日に陽の当たる屋外で写真を撮る時、シャッタースピードをISO感度の逆数、絞りをF16にすると適正露光が得られる。(例:ISO400であれば1/400→1/500でF16となる)

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デジタルライカもAUTOではなくマニュアル設定で撮れば良いのは分かるが、個人的にはマニュアル撮影とAUTO撮影は状況で使い分けたい。例えば背面モニターが無いM10DでAUTO撮影する場合、ユーザーはどのように適正露出を得ているのかも非常に気になる今日この頃だ。

最近は少々視点を変えて、M11で撮影する時は1枚の絵の全体的な適正EV値を追求するのではなくて、コントラスト重視。つまり、仮に白飛びや黒潰れの場所があっても、適正露出で写す被写体部分との対比を楽しむ、という見方をより重視するようにしている。

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【光と影】

”Photogoraph”の語源通り、写真とは画像を光で描くこと。それがウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットの唱えた「自然の鉛筆」の原点であり、彼が抱いたカメラや近代技術への大きな期待と夢ではないだろうか。その光と影を今日の我々はどのように享受して自分なりに咀嚼して表現すべきであろうか。M11と対峙する今この時、様々なことを感じさせてくれ、考えさせてくれるのが僕にとっての「ライカ冥利」であるのだ。

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NOKTON 35mmf1.5は可也の優等生だ。Asphericalレンズの適度にシャープな写りも気に入っている。
軽量188gはM11と合計でも718g。この機動性には代え難い魅力がある。

【晴れたらセンパチ】

前置きが長くなったが今回はNokton Vintage Line 35mm F1.5 Type-Iを装着して、曇天下において「SUNNY 16 RULE=感度分の16=晴れたらセンパチ」の「公式」に則ってマニュアル撮影してみた。

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ISOは400固定、曇天では(1/250+F11)、日陰では(1/250~1/125+F8~5.6)
EXIF情報がないので以下コメントのF値は若干曖昧な記憶に基づく。
全てJPEG撮って出しで現像は一切無し。

曇天の空。1/250でF11で撮影。木々もあるがセオリー通りのf11で丁度良い露出バランス。
満開のつつじの花を狙った露出はF8、 1/250 、これも許容範囲内。
同様に1/250 F8で撮影。後方建物の陰の部分が潰れているがダイナミックレンジは広い。

同様に1/250 F8で撮影。日陰部分が潰れるがこれも許容範囲だろう。
1/250 F5.6だが暗部への階調を感じる。
1/250 F8 露出は前方の庭木部分に合わせたが鳥居は何とか潰れずに残った。
1/250 F8だと記憶する。全体的に丁度良い露出。
曇天で光線も左右の木々にやや遮られた被写体。
1/250 F8では暗すぎたがライカらしい写りと言えなくもない。
中央上部の新緑の葉や屋根瓦部分で空に面した部分の露出はやや明るいのが分かる。
1/250 F11 薄曇りだが雲の描写含めて全体的に適正露出。 
1/250 F5.6 こちらも適正露出。
1/250 F11 やや明る過ぎた。もう少し陰影にメリハリをつけたい。
F5.6では明るすぎたが、要は何を主題として撮っているかにも依るだろう。
F8に絞ったところややアンダーながらこちらの方が好み。
同じくF8で撮影。これもアンダー気味だが正面の緑色に救われている感じだ。

***

「三位一体」のマニュアル撮影で感じたことは「SUNNY 16 RULE」でも結構上手く行くということ。流石に世界中で「基本的な露出概念」とされているだけはある。だからと言って絞り優先AUTOでの撮影を諦めている訳では無いし、M11に対して優等生的な絵を求めている訳でもない。まだ暫くはM11のAE絞り優先のクセを会得する日々が続きそうだ。

(2023/4/28公開)2243   ※ブログ内容は随時、加筆修正しています。

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2023年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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3 Comments

  1. 鈴木隆浩

    いや〜、すばらしい検証ブログです。
    ほんと、M11は、露出がどうなのって、ちょくちょく思ってました。
    それで、しばらくの間、ズイコー使ってた時はずっとモニターはビゾフレックスなので
    そういうストレスは、あまり感じなかったのですが、そりゃそうですよね。
    ここ最近、沈胴式周八枚を装着して、レンジファインダーを覗いたとき、
    画角もわからなくなるし、露出も撮影後のモニター見て、あれれ・・ってなってました。
    でもまあ、それも「楽しめ!」っていうのがライカなんでしょうか。
    私的には、あれれ??を楽しんでいるところです。
    なってったって、イメージ通りにならないですからね。(;^ω^)

  2. 鈴木隆浩

    ちなみにブラック軽量のノクトン35mmF1.5、やっぱりそっちにすりゃよかったなって、
    いまだに思ってます。

    1. ゼンマイオヤジ

      Nokton35mmType-IIは282グラムですから更に重いアポズミ到着までの間の筋力養成にはちょうど良いかも知れませんね♪

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