『ライカM11、3つの難点』(前編)

M11について、10カ月以上使って感じた自分なりの課題についてまとめてみた。

(1) 完全無音・無感触の電子シャッター:
Mシリーズで初めて搭載された電子シャッター。これはM11購入3大動機の一つである。
最高1/16000秒ではあるが、それでもM型に初搭載された利便性は極めて大きい。

今から10年前に発売されたフジ(X-E2は最高1/32000秒まで)とパナ(GM1は最高1/16000秒まで)は両者とも2013年発売当時(注1)から積極的に電子シャッターを搭載したブランドだが、今回ようやくM11でも待望の導入となったことは賞賛に値する。その『賞賛』については別ブログで述べることにするが、今回は光と影の『影』の部分について。

(注1)X-E2は発売後3年目の2016年2月にファームウェアアップデートで電子シャッターが追加され、3種類の電子音と無音から選べるようになった。そんなことがファームウェアのアップデートで出来るんだ、と当時は非常に驚いたものだ。因みにこの時のファームウェアV4.00は内容が特盛過ぎて別のカメラ(=X-E2S)に進化してしまったほどだ。今でも語り継がれるフジフィルム渾身の『大盤振る舞いファームウェア』であったが、ファームウェアの威力というものを思い知らされた一件でもあった。つまり、ライカだってできるはずですよね、ということを声を大にして言いたい。
  
M11の電子シャッターは完全無音のみの設定となる。この理由と哲学は何であろうか。
シャッターボタンを押しても何も聞こえず、指先にも感触は一切無いのでこれは限りなく心許ない。本当に撮れているのか毎回疑問となる。先日、露出開放+電子シャッターで撮影中に運悪くフリーズと重なったが、気が付くまでの間は全て空シャッターになってしまった。僕は撮影中に毎回のモニター確認はしないのだが、このハプニング以降は極力、撮影画像があることを確認(注2)するようにしている。せめて完全無音と小さな電子シャッター音の選択が出来るようにファームウェアアップデートで改良して欲しいところだが、国産のような細やかな対応をドイツ製ライカに求めることは酷なのであろうか。連写もしない真冬の寒さの中でフリーズするということは、単純に熱問題が要因とは思えないのだが。

(注2)シャッターボタンを押している間、画像が映る設定。


(2) フリーズ問題:
既に別ブログ(=M11のフリーズ問題)でも述べたので詳細は割愛するが、発売から丸1年経っても未だに発生するフリーズ問題。この改善は早急にお願いしたい。

【追記2024/3/19】
今日に至るまで数度のファームウェア公開がなされたが、その結果、フリーズ問題は略「解消」されている。その代わりにというべきか、昨年は「カードエラー」表示が頻発したが、これもSDカードを新品に交換することで解消した。巷では未だにフリーズ現象に悩まされるユーザーもいるようだが、まずはFW最新版を確認し、カメラリセットを行うこと。それでも駄目ならライカ店に相談することが賢明だろう。


M11+Voigtlander NOKTON Vintage Line 35mm F1.5 VM Type-I

(3) 暴れる露出:
今の僕にとって最大の課題である。
これは撮影技量とも関係するので大きな声では言えないが、マルチ測光撮影でも中央重点式のように明暗差が激しい。巷でよく言われる通りM11のシャドー部分には持ち上げれば多くの情報が写り込んでいるので、最大15ストップとなったダイナミックレンジの広さは重々承知している。それでも、明暗部の分離が顕著に表れるので中々思い描いた絵が一発で撮れない。露出補正は±3EV(1⁄3 EVステップ)であるが、補正時には時として±2~3ステップ位まで極端に調整しないと適正露出が得られぬケースがある。フジやパナではここまで大幅な補正が必要になるケースは稀である為、M11で戸惑う点だ。

基本はJPEG撮って出しで若干の露出調整を行うのがポリシーであるが、フジやパナのミラーレスの感覚とは異なる階調とコントラストで出てくる絵は時としてボツを量産する。暗部を持ち上げれば白飛びとなり、明部を優先すると暗部が潰れる。この境界域が非常に狭く感じるのが個人的な感想。巷のM11ユーザーの紹介する撮影画像を見ても上述にも似た状況を感じている。これがミラーレスと異なり、素通しガラスを通して被写体を捉えるレンジファインダースタイルの難しさだろう。

くどいがライトルームなどは使わぬ『JPEG党員』である。”Leica Maestro® III”の色味をこの上無く好む為、色々と試行錯誤をしつつ、今は兎に角、枚数を重ねる中で自分なりの解を見つけることに取り組んでいる。思い起こせばこのプロセスは正にフィルム時代の撮影手法と同じではないか。そうだ、M11の最新デジタル機材になってもライカの目指すところは、フィルム撮影と変わらぬ一連のルーティーンや写真撮影に向き合う基本姿勢を再認識させてくれることなのだ。

良く聞く表現だが、『ライカは箸と同じで、マスターするまでに時間がかかるが、ひとたび使いこなせるようになれば万能でどんな料理にも箸一本で対応できる』と言うのは言い得て妙だろう。そうであることを信じたいし、そうなる日が来ることを信じたい、と言うのが今の正直な感想である。

とは言え、M11はデジタルカメラだ。昨年4月にはハイライト重点測光モードが新たにファームアップで加えられ、そのアルゴリズム改善もファームウェアアップデートされたように、マルチ測光におけるアルゴリズム改善の必要性もあるのではないかと勘繰ってしまうのだ。

ということで、極めて個人的な感想になってしまったが、M11と色々格闘するのが楽しみの一つでもあるし、鬱陶しいとも感じる点だ。果たして僕がこのシーソーゲームの勝者となれるのは何時であろうか。いち早く『箸』を自在に使いこなしたいところだが、現時点では少しづつ手応えを感じつつも根競べの様相を呈している。

まぁ、なんやかんや言ってライカのせいにしているうちはまだまだだけれどもね。

***

続いて後編では『3つの魅力』について述べる。
(2023/2/15公開)

***

(追記)①
2023年3月2日、ライカはM11用の最新ファームウェア1.6.1を発表した。
このFWでは『カメラの誤作動によるフリーズを修正』と説明されている。ようやくライカとして本件の改良に着手したことと理解する。M11ユーザーにとっては待望のFWである。
(2023/3/3公開)
 673

(追記)②
FW1.6.1ではフリーズ修正のみならず、『露出過度の散発的な発生についても修復』されたと英語版のリリースノートには記されている。ということは上述『(3)暴れる露出』についても何らかの改善が期待されるところだ。どうやら僕の指摘事項についてもあながちハズレではなく、ライカ側としても問題事項として認識していたということだろう。その改善結果については今後の実写を通して確認したい。
(2023/3/4公開)
 704

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2023年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

おすすめの関連記事

2 Comments

  1. 鈴木隆浩

    いや〜、おっしゃる通りのM11だと思います。
    私も早く自在に「箸」を使える人になりたいです。

  2. ゼンマイオヤジ

    プロ写真家の間でも『ライカを使うと写真が下手になる』との表現に多々接しますが、クセがあるカメラには違いありません。しかし、我慢して工夫して場数を踏んで解決策を見つける『修行僧』になるしかありませんね(笑) 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です