“ライカニスト中尾歓都己さんのトークショウを堪能してきた”

【pas kyoto mais kyoto ~ 京都らしくない京都を探したい】

現在、ライカ松坂屋名古屋店(北館3F)で開催中の『中尾歓都己写真展』に因んで、
中尾さんご本人によるトークショウが開催されたので参加してきた。
ライカを趣味で使うプロ写真家は多いが、仕事でメインに使う方はまだまだ少数派だろう。
その少数派の代表格でもある中尾さんの写真展は3月31日まで無料開催中なので、
近隣の方はこの機会に是非ご覧頂ければ新たなる発見も生まれるだろう。
まるでルネサンスの油彩絵画を思わせるような精密繊細で美しい作品はブログの写真では伝わり難い圧倒的な描写力を誇る。これって本当に写真?と思うくらいの発色と表現力、そして「決定的瞬間」を捉えた写真に感動した。

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【反射光と透過光について】

『プリント(反射光)とモニター(透過光)で見る写真は異なります』、
と、多くの写真家は紙にプリントすることを声高に主張している。
著名なメディア批評家のマーシャル・マクルーハンの理論には種々異論もあるが、
反射光(プリント)を見ることで人間の脳は活性化する、とも言われている。
仮に、写真鑑賞で脳のリフレッシュも兼ねることが出来るのであれば、
美術鑑賞同様に健康面でも大いに推奨されるべきだろう。

一方で、モニターで見るとモニターの機種ごとに色味が微妙に異なるのと同様に
プリントを見ても、網膜を通して脳で感じ取る色彩には人によって違いが生じ得る。
あくまで個人的感想であるが、視覚的に目に優しいと感じるのはプリントの方だ。
加えて紙の質感やらインク(現像)の色乗り、室内や展示場の照明の種類などもじっくりと見て感じることが出来るのが透過光のモニターで見る場合との最大の違いだと思っている。

更に言えば、反射光で見るということはそこに光を反射するべき「物体」が実在することであり、実際にモノがあるという安心感が心の片隅に生じる。ところがモニターで見る透過光はRGB の世界なので、電源OFFと同時に消え去るモノ。云わばVR(仮想現実)の世界を覗き込んでいるようなもので、何か落ち着きがない。
これらは全て筆者が感じている正直な印象であります。
短絡的な結論だが、写真表現が多種多様化し続けている今日では、撮影者が意図する最終媒体に合わせてその写真を鑑賞するのが一番適合するのではないかと最近は考えるようになっている。

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【おすすめのYouTube予習動画はこちら】

閑話休題。
今回のようなトークショウに参加する際には事前の「予習」は必須だろう。
丸腰で参加しても良いのだが、話の理解度や吸収力に差が生じるので、
お話を伺う側の礼儀としても最低限の事前情報収集は必要だと思っている。
幸い、以下の動画は過去に何度も拝見しているので、復習を兼ねて見直してみた。
今回、ご本人と直接お会いできた幸運と、
機会を与えて頂いたライカショップの皆様には心より御礼申し上げます。

【参考】 
●ライカQ2の解説動画: 『KATSUMI NAKAO With the Leica Q2
●ライカSL2-Sの魅力】フォトグラファー:
中尾歓都己インタビュー動画「ライカとの出会い、SL2-Sの使いこなしのコツとは?

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大変気さくで明るい中尾さんは些細な質問にまで優しくお答えいただきました。
現在のメイン機種はSL2が2台、SL2-Sが2台だそう。Sofort2も絶賛されていました。同感です。
発売後10年以上酷使しているバリオ・エルマリート24-90mm。
まだ一度も故障せずに使用中だそう。凄い存在感。ライカなりに重いです。
大切なレンズですが会場の参加者全員が順番に手渡しでその感触を確かめることが出来ました。
SL2-S: 歴戦の勇者の貫禄十二分。
トークショウでは撮影時の裏話も沢山お聞きできるのが醍醐味の一つです。
この写真は着物の柄を映す為にモデルさんには炎天下で100回もジャンプをお願いしたとか。
その結果、モデルさんは・・・ということになったそうです。
写真も実に美しく、圧倒されると同時に、プロのモデルさんの根性と体力にも頭が下がります。
この素敵な場所は何処だろう、と帰宅後に思わず探してしまった。
山の稜線をヒントに見つけることが出来た。
M10-P(→記憶がやや曖昧)+Noctilux 50mm F0.95で撮影した写真。
とろけるような甘いボケと美しい映像はは是非実際のプリントでご覧ください。

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【今回、記憶に残った点】

● 中尾さんのキャリア:
  写真家というのはアントレプレナーだとつくづく実感した。
  脱サラをして写真家の道を歩んだ彼は、渡仏後の語学習得から始まり、
  異国の地では多くの困難があったことだろう。
  オペラ座近くのアパートに住まわれたと聞いて、あの辺ね、と想像できた。
  並々ならぬ努力と天性の感性、アイデア、実行力、資金力、運とタイミング、etc
  「伸るか反るか」の勝負に人生を賭ける勇気は保守的な凡人には出来ないこと。
● 独特のファッションスタイル:
  全身黒尽くめのスタイルは撮影時の映りこみを意識してとのことです。
  ボリューム感あるブーツとハットは氏のトレードマーク。
  DCブランドで固めた「ユニフォーム」が素敵。
● ストロボの話: 現在はスイス製の機材を利用中とのことですが、
  ストロボの光源も国(ブランド)によって色味が異なるという解説は大変
  興味深いものがあった。
● 中判ライカSから始まるライカカメラ&レンズの話。
  兎に角、中尾さんは筋金入りのライカニストである。
  現在は仕事でもSL2-Sの2400万画素で十二分とのこと。激しく同意。
● 撮影の裏話盛りだくさん。「舞妓さんポーズ」の話も印象的でありました。  
  
                ***

ゼンマイオヤジとしては腕時計も見逃す訳には行きません。
この日は “HUBLOT Spirit of Big Bang” がお似合いでした。
【プロフィール】中尾歓都己 Katsumi Nakao
京都生まれ、サラリーマンを経てカメラマンを目指し、渡仏。
数々のカメラマンに師事し、その後、独立。現地にて雑誌を中心に活動。
拠点を東京に移し、その後、京都へ。
2005年に有限会社中尾写真事務所を設立。広告、雑誌を中心に活動中。

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どんなプロ写真家でも順風満帆の道程だけを歩んできた人はいないようである。
中尾さんのお話をお聞きしても同様で、今日までの氏の厳しい人生経験をチラリと垣間見たような気がした。そして著名なプロ写真家に共通するのは、独自の撮影手法で個性を表現する術を構築している点だろう。それはクリエイターに限らず、業種を超えて一般職業人・社会人としての命題にも共通することではないかと感じた次第。

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pas kyoto mais kyoto
中尾歓都己写真展 (ライカ松坂屋名古屋店)
2023.11.15~2024.3.31(開催中)
『京都らしくない京都を探したい。
新たな視覚から、予想を裏切るような京都の姿を探しています。
これは、混沌と調和が共存する、真の京都の表現。
見慣れた風景を超えた、新たな京都の発見をしていきたい。』

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(2024/2/1公開)22220   ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2023年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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