【近江神宮は時の聖地】
2023年6月10日。
毎年この日は「時の記念日」として、世間一般でもそれなりに認知されつつある。
特に地方版のニュースでは近江神宮での新作時計や雅楽の舞の奉納儀式が毎年紹介されているが、この儀式が主に屋外で行われることもあり当日の天気が毎回心配の種となる。
今年は台風3号の接近中と梅雨の真っ最中という不安定な天候の中、幸いにも当日は梅雨の合間で曇り空となったことは多くの関係者に幸いした。コロナ禍の縮小制限も解除され、ご同慶の至りである。
【漏刻祭をご存知だろうか】
上記の奉納行事が「漏刻祭(ロウコクサイ)」と呼ばれるのだが、時計好きにはこの意味はお分かりの通り。近江神宮に祀られている天智天皇が、約1300年前に時計の原点である水時計の「漏刻」を作り日本で初めて時を知らせたという日本書紀の記述にちなんで、毎年行なわれているものだ。
この「漏刻」というのが日常生活では耳慣れない単語であるのだが、極めて原始的ながらも科学の知恵を結集した見事な「水時計」のことである。この「水力」つながりで、自分は知る人ぞ知る長野県諏訪市にある「水運儀象台」を連想する。
「水運儀象台」とは中国・北宋時代に皇帝の命を受け、5年の年月をかけて建設された水力で動く大型天文観測時計塔のことだが、世界で初めて日本国内で完全復刻された見事なもの。風雨にさらされる屋外に建設された為、その維持・管理にも多大なる労力を要するのであるが、「水つながり」の観点からも近江神宮と水運儀象台は「時の聖地」として一見に値する。時計好きならずとも一度は訪問されることをお勧めしたい。特に近江神宮境内にある「近江勧学館」では 毎年1月に競技かるたの「名人位・クイーン位決定戦」が行われており、「かるたファン」には知名度抜群の「かるた聖地」でもある。
尚、「水運儀象台」については改めて別途紹介したい。
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因みに、近江神宮は皇紀2600年(=西暦1940年)を記念して昭和13年(同1938年)6月10日に地鎮祭を行い、延べ13万人にのぼる県民の勤労奉仕も得て工事は進められた。そして、昭和15年(同1940年)竣工・創建の運びとなり、その年11月7日、勅使御参向のもとこの大津宮跡隣接地に御鎮座祭が厳粛に斎行された。
つまり、近江神宮自体の歴史は未だ百年にも満たない若い神社なのである。
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【時(時間)の概念は人類が発明したものだ】
過去・現在・未来の中で生きる我々は限りある時間の中でそれぞれの時を刻み続ける。時間は瞬間瞬間としては万人に平等に与えられるが、個人が享受できる長さ(=総時間)は「寿命」として夫々異なる。そして各自で感じる一日の時間の長さも千差万別だが、それを標準化した時間として表すのが時計である。その意味で時計の役割は、人間の感覚と時の概念とのズレを表す測定装置としても考えることが出来るかもしれない。
今日も一日、そんなことを考えつつ自分なりの人生というタイムマシンを愉しむことにしよう。
(2023/6/12公開)3176 ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。
「漏時」、「水時計」など、すごい博識です。
まったく知りませんでした。
私も一緒にタイムマシーンに乗せていただき、感謝申し上げます。
表紙の写真の流れで「フランク三浦」でも出てくるかと思った私は不埒で
反省です。
上野の科学博物館、谷中の大名時計博物館など、都内にも「和時計」に関する聖地があるのでご興味あれば散歩がてらオススメです。