以前、時計ジャーナリストの並木浩一氏が面白い分析をしていた。
丸型から四角への造形の変遷の歴史は中世ルネサンス期に遡り、
その源は絵画の形にあるという。
中世教会の天井画であったフレスコ画は丸型が多い。
その後、富裕階級市民層の肖像画ブームでも丸型額縁が全盛となるが、
やがて四角いカセッタ型注1に変わり、現在のタブロー画注2になったというのだ。
注1)カセッタcassettaとはイタリア語で「小箱」の意味。
注2) 壁画ではなく板絵やキャンバス画のこと。仏語で「絵画」を指す。 ラテン語で「板」を意味する「タブラ(tabula)」に語源をもつことから、狭義では「板絵」を意味する。
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腕時計も同様に、教会時計や時計塔の時計が小型化してクロックから懐中(丸型)に、
そして20世紀初頭の直線芸術美『アール・デコ』ブームで角型の開花となり、
角型腕時計(レクタンギュラー)としての地位を確立して行くというものである。
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ということは角型レクタンは近代史において丸型への反旗。
伝統や権力に抗した最新ファッション表現の旗手、と言えるかもしれない。
丸型は普遍、角型は飽きるとも良く言われるが、決してそんなことはない。
完成されたバランスと造形美を誇る角型腕時計にも永遠なる普遍性が宿っている。
但し、ここでも鍵は『全体のデザインバランス』だろう。
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「GIRARD PERREGAUX 1945」はGPの看板モデル。
このカレcarré(正方形)もレクタンギュラーの一種だと言える。
これで結果的には自分なりの「現代レクタン3部作」が完成することになった。
1から12時までの全アラビア数字が揃う。
そしてこのGPのデイト表示は全部赤字。
毎日が赤字、というところがミソ。
地味で大きな時計であるが、今の自分にとっての身丈に合った1本というところだ。
(2023/5/15公開)2640 ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。
ジラールペルゴ、すごくカッコ良いです。
腕にはめて写した写真に憧れました。
で、その写真にライカの赤マークが写し込んでいるのが、ますます素敵に見えました。
世界初のレクタンギュラー腕時計は1904年のCartier「サントス」が有名です。当時主流の丸型(懐中時計)ではないレクタンとしたことにCartierの創造性を感じます。今でも美しい現代のサントスにも憧れは尽きません。