『吾輩は時計好きである。アガリはまだない。
どんな時計が好きか未だにとんと見当がつかぬ。
何でも瑞西製とか独逸製とか日本製とかの
古めかしいデザインが好きな点だけは記憶してゐる。
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吾輩は最近始めてデジタル時計といふものを見た。
いや、それは嘘でデジタル時計は知ってはいるが生涯で2本しか買ってはいない。
1995年のALBA SPOONと2018年の復刻ジウジアーロのことである。
それがこの期に及んで3本目に逝ってしまった。
しかもあとで聞くとそれは「Gショック」といふ時計の中で
一番獰悪(どうあく)な5600系の種族であつたさうだ。
***
このGショックといふのは時々我々を捕へて煮て食ふといふ話である。
数十本ものGショック沼に迷い込み食はれてしまった輩の悲(楽)しい話も聞く。
しかしこの精悍な文字盤を見て別段恐しいとも思はなかつた。
ただ我が掌に載せてスーと持ち上げた時、
何だかフワフワした感じがあつたばかりである。
掌の上で少し落ちついてコイツの顔を見たのが、
いはゆる「反転液晶」といふものの見始めであらう。
この時、デジタルの食わず嫌いとは妙なものだと思つた感じが
今更ながら強烈に残つてゐる。
***
吾輩がこのデジタルと同居してそのベゼルを観察すればするほど、
瑞西の雲上ブランドであるアクアナウトのベゼルと似ていると断言せざるを得ない。
しかしアクアナウトの方は丁重に扱うが、デジタルの方はまるでオモチャのごとく
逆さにしたり、抛(ほう)り出したり、鞄の中へ押し込んだりする。
しかも吾輩が少しでも目を離したり油断しようものなら、
自ら過酷な大自然に飛び込んだり乱暴な扱いや迫害されることを好むのである。
ここに至り瑞西時計アクアナウトとの最大の相違点が両者の出自にあることを
痛感し始めたのである。Gショックのベゼルが如何に似ていようと両者の育ちと家柄は
全くの別次元のものであって、例えれば主人と主人に尽くす召使いのようなもので
あるのだが、一方で両者は不思議な補完関係にもあることを最近ひしひしと
感じ始めてゐる。 』
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時計は
もっと
美味しい。
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(2023/12/01公開) 15120 ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。
Gショック、なぜか欲しくなります。それとたまにスウォッチも。(^o^)
どうぞ遠慮なく逝っちゃってください。