“SNAP SAFARI@ケニア・ナイロビ国立公園”

『一世一代のバカンスへ。』

【ナイロビ国立公園は安・近・短だ】
ケニアのサファリパークは特異な立地条件を誇る。
首都ナイロビに隣接しているという俄かに信じ難いその場所は、丸で都内のど真ん中にある上野動物園のような感覚に陥る。逆に言えば非常にコンビニエント。それもナイロビ市内から10km程の距離にあるので車で30分もすれば「ナイロビ国立公園」のメインゲートに到着する。日本国内にもあるサファリパークとは未だに無縁であるが、アフリカで本物のサファリパークを訪問できたのは一世一代の幸運であった。

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日本のそれとの決定的な違いは、本場ナイロビ国立公園の動物たちは『自給自足』の野生の生活をしている点だろう。それゆえに『弱肉強食』の過酷な大自然の中で、見物する(or、される)人間側は動物とは相応の距離を置いて、ローカルルールに従って行動することが最低限の義務となる。


ナイロビ国際空港。
空の青さは世界中で同じ色なのだが、気分次第で異なって見えるのが人間の感覚。
ナイロビ国立公園の玄関となる第1ゲート。
第2ゲートに相当する場所で入場料を支払う。
学校の授業なのか分からないが子供たちもゲートから入って行く。
ケニア人の顔立ちは子供からも分かるように温和な表情が印象的。
アフリカでも場所と部族によって全く異なる表情を呈している。アフリカは広大だ。
「ライオン・キング風?」の化粧が何ともカワイイ。
通常のサファリパークで見学するにはこのようにオープン式のルーフトップ車が好ましい。
我々はランクルタイプの4WDで走ってみた。

【BIG-5とは】
アフリカの本場サファリでは「BIG-5」に遭遇出来ればラッキーと言われる。
BIG-5とは「ライオン、アフリカゾウ、ヒョウ、サイ、バッファロー」を指すのだが、アフリカゾウはナイロビ国立公園(以下、サファリ)にはいないらしい。入口で入場料を払い、自前の4WDで早速サファリに入る。
よくよく考えれば本物のサファリとは広大なる檻(オリ)のようなもので、この中では野生動物と人間が柵も壁も無く「仮の同居」をすることになる訳だ。勿論、動物にエサを与えることなど一切しない。全てが大自然の摂理に基づく「野放し状態」である。

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人間が目を凝らして草原を見るのと同時に、動物もまた虎視眈々と我々を見ていることを想像するだけでも可也エキサイティングだ。特に肉食動物にとっては人間さえもターゲットに成り得る訳で、運転手さん曰く『いつどこからヒョウが狙っているかも知れないので、高さ30cmの草むらであっても決して油断しないように』との忠告を頂いた。そもそも車外に出ることはNGであろうが、ほんの数十秒でも車外で味わうサファリの空気は実に新鮮だ。

30分ほど動物を探し求めて走っているところ。
一瞬、車外に出たのはこの撮影時だけだが、周囲への警戒感でかなり緊張した。
”IVORY BURNING SITE”(=密猟者による象牙などの没収品の焼却所)の表示が嘆かわしい。

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【BIG-5」に拘る積りは毛頭ないが・・・】 
折角の訪問であるのだから、BIG-5以外でも、せめて「5種類」くらいの動物に遭遇出来れば嬉しいなぁ、などとお気楽に考えていたのだが、いざ、車で走り始めてみるといくらサファリと雖もそう簡単に動物に遭遇する訳では無いことに気付かされる。特にナイロビ市街地に近いエリアでは尚更だ。ケニア国内ではやや小さめのナイロビ国立公園とは言え東京23区ほどの広さであり、こういうのは全て運任せで考えた方が良いようだ。

この平らな木々の葉が如何にもアフリカの平原らしい光景だ。
そして、なにやら突然と動く物体が・・・
キリン2頭に遭遇したこの時は少々興奮した。
ガゼルかインパラか分からないが、シマウマ達とも広い平原で遭遇。
シマウマは近づいても逃げない。人間や車にも慣れているのだろうか。
後で調べると今回見たのは全て「インパラ」でした。
「ガゼル」はメスにも小さな角があり、胴体側面に黒っぽい模様があるのが特徴。
全てインパラの群れ。
そういえば映画「キリマンジャロの雪」(1952)で主人公のハリー(グレゴリー・ペック)が

インパラの群れをブッシュの中で見る時に受けた傷口が壊疽(えそ)となったことを思い出した。
今度はダチョウの親子が不意に草むらから出てきた。
至近距離で見ると結構、巨大だ。
この木も映画「キリマンジャロの雪」のラストシーンと同じに見えてしまった。

【映画「キリマンジャロの雪」を再度鑑賞してみた】

結局、今回は4種類の野生動物に遭遇できた。
「BIG-4」ではなく、精々「SMALL-4」というところだろう。それでも大自然で生きる野生の動物達を間近に見ることも去ることながら、ナイロビ国立公園の大地を一瞬でも踏みしめることが出来たのは何よりも感動した瞬間であった。動物に興味のあるなしを問わず、本場のサファリを肌で感じる経験は言葉では表現できない感動をもたらすことは間違いと言えるだろう。

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この機会に映画「キリマンジャロの雪」(1952年)を観直してみた。
ハチャメチャな色恋沙汰やスペイン内戦の描写はヘミングウェイの自伝的内容と重複しており、それを更に脚色した当時のハリウッド映画ではこうしたドラマチックな恋愛劇が不可欠だったのだろう。この10年後に登場する映画「ティファニーで朝食を」も基本路線は恋愛劇であり、「玉の輿」を目指す片田舎の女性のイメージが重なってしまうのだが、「キリマンジャロの雪」では「サファリ」や「スペイン内戦」をトッピングすることで凡庸な恋愛劇に冒険活劇的なスリルと野性味とミリタリー風味を加えている。それこそがヘミングウェイの「らしさ」であり、彼の真骨頂なのだろうと感じている。

【ヘミングウェイとバブルバック】
サファリと言えば連想するのがアーネスト・ヘミングウェイと彼の愛用時計だったROLEXの「バブルバック」だ。
1936年発表の短編小説『キリマンジャロの雪』を執筆するに際してヘミングウェイは1933年、34年にアフリカを訪問している。サファリでアメーバ赤痢にかかってしまい、ナイロビへ小型複葉機で搬送される途中に冠雪のキリマンジャロを目にしたと伝えられる。その彼が当時愛用していたのがROLEXのバブルバックだ。

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バブルバックとは『ROLEXオイスターパーペチュアル』のニックネームであり、1933年から55年まで生産されたケース径32mmの小振りで裏蓋が丸く盛り上がった泡(bubble)のような形状なのでそう呼ばれた。当時、世界初の自動巻の完成形であり、自動巻き用のローター(=回転式振り子)をケースに収めるために裏蓋が盛り上がってしまったことによるデザインだ。加えて防水、そして世界初のクロノメーター認定時計であった。

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この日の自分はバブルバックとは程遠い「Tissot 1925 Porto」と言う手巻き式トノー型復刻時計を身に着けていたが、気分だけは「アバクロンビー&フィッチ」製(=実はOEM製造したのは英国の老舗「ウィリス&ガイガー」だが)のサファリジャケットを着たヘミングウェイが「バブルバック」を手首に巻き付けた姿を4駆車中で揺られつつ夢想していた。

今回の相棒時計は「Tissot 1925 Porto」。
手巻き式トノー(樽型)デザイン。Deepな蘊蓄はコチラをどうぞ。

(2023/10/9公開) 9400


ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2023年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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2 Comments

  1. 鈴木隆浩

    アフリカまで堪能されているなんて、tommyさんは本当にすごいです。
    サファリは、日本で野良猫に遭遇するがごとく、Big5がいる感じですね。
    そんな体験、私はたぶん一生ないかなと思いました。
    そもそもアクティブさがないから。
    でも、憧れます。
    最後の写真の時計素敵です。

    1. ゼンマイオヤジ

      多分、ナイロビ国立公園はアフリカのサファリでも最もコンビニエントな存在です。
      7~10日間ツアーもありますが、今回は日帰りながらも本場の醍醐味は十分感じることが出来ました。『少年ケニヤ』の気分にちょっぴり浸れました・・・って言っても誰も知りませんよね。

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