“SNAP「柳橋」with Leica M11+TTArtisan 28mm f/5.6”

『レンズを見ながら、こう考えた。
  独ブランド一穴では能がない。
   レンズ売買重ねても写真の本質とは無関係。
     拘りを通せば窮屈だ。
       とかくにレンズ沼は住みにくい。』
 (肘枕)

.

【ズマロン・オマージュのTTArtisan 28mm f/5.6】

田中長徳さんが2023/2/8公開のYouTube『カメラノートスペシャル・隅田川のほとりで』で興味深い話をしていた。

***

現行の復刻ズマロン28mm f5.6とTTArtisan 28mm f/5.6をブラインドで撮り比べたところ、75%の人がTTArtisanをズマロンだと誤認したという。その理由は、『コントラストが高く、画像がクリアだからライカに違いない』と考えたかららしい。つまり、ご本家ズマロンの方がその逆で、コントラストが低くて画像がクリアではなかった、ということだ。この結果を以て優劣の断言はできないし、そもそも比較すること自体が「お遊び」であるのだが、要はアウトプットの「写真」の出来栄えと言う点ではTTArtisan製のこのレンズが75%の人に受け入れられたという「事実」が証明されたことだろう。
他にも複数の著名な職業写真家によるTTArtisanのレビュー評価も概ね好評である。「ご祝儀コメント」として割り引いてもTTArtisanは十分に及第点の評価であり、実際にこの1年半の間、自分で使ってみてその色ノリの良さと描写性能は実感している。

【TTArtisanの実力や如何に】

つまりはこのレンズ、外見は100%クラシカルでここまでやるかの『赤ズマロン』オマージュであるが、光学性能はご本家とは異なる4群7枚構成で、LD異常低分散レンズや高屈折低分散レンズを採用した結果、コントラスト良好、歪曲収差の補正も良好、絞り設定での性能変化も殆ど感じない現代的な性能を誇る。欲を言えば近接撮影距離までズマロンを真似ての1.0mと言うのが長すぎるのだが、その点は小振りなオールドデザインと質量約150gで高さが19mmというミニマムなサイズを実現した代償と考えれば文句は無い。因みにご本家の復刻ズマロンは元祖初代ズマロンと同じ4群6枚構成で、重量は165gだ。

元来の特徴がスナップシュターとしての超コンパクトレンズであるのだから近接1.0mも許せよう。暗いf値は近年のデジカメではISO高感度がカバーしてくれる。しかし暗いと言ってもf4通しのズームレンズも多いご時世だ。f4から1段絞った5.6であればそれ程でもあるまい。問題はf5.6と言う数字に対してユーザーが抱く精神的な「暗所劣等感」や「ボケ味偏愛症」に他ならない。

【一粒で二度美味しい楽しみ】

スマホ並みの実用焦点距離28mmの画角と、被写界深度が深い開放f5.6の絞りで、パンフォーカスやゾーンフォーカスを多用するSNAP撮影での機動性にも十分応えてくれる。所有する個体ではオーバーインフもない。
ピントリング部分のレバーは無限遠位置で自動ロックが掛かる仕組みで、レンズ脱着の際には自動ロックは便利だ。レバーノブを押せば容易にロックが解除できる。何よりも、こうしたクラシカルな外観とレバー式機構を現代の高性能レンズで味わえるのだから嬉しい限りだ。
昨年2月8日発売と同時に購入以来、X-Pro3でも愛用しているがAPS-Cで使えば最近流行りの換算42mmで撮影できるので『一粒で二度美味しい』楽しみを満喫出来る。
ビルドクオリティも抜かりが無く、「ズマロン」酷似の角型レンズフードや前後のキャップに至るまで真鍮を使用したレトロな外観には遊び心が満載されている。
現時点で筆者が唯一所有する中華レンズであるが、その実力たるや必要にして十分。
クラシカルデザインファン、軽薄短小レンズファンとしては「見て・触って・写して」三拍子揃って楽しいレンズ、というのが偽らざる感想である。

【主要諸元】・・・(括弧内は現行復刻ズマロンの仕様)

  • 焦点距離:28mm  (同左)
  • レンズ構成:4群7枚(LD異常低分散レンズ1枚、高屈折低分散レンズ2枚)(4群6枚)
  • 最短撮影距離:約1.0m (同左)
  • 絞り:F5.6-F22  (同左)
  • 絞り羽根:6枚  (8枚)
  • フィルター径:37mm  (34mm)
  • 鏡筒、フード、フロント&リアキャップの素材:真鍮
  • サイズ:約Φ51mm×19mm(マウント部除く) (Φ51mm×18mm)
  • 質量:約150g (165g)

【新作Voigtlander Color-Skopar 28mm f2.8に興味津々】

余談だが8月8日にコシナより「Voigtlander Color-Skopar 28mm f2.8」が発売された。
当然ながら比較されるのは「ライカエルマリートf2.8/28mm」であり、両者共に絞り羽根10枚、最大f値22、非球面1枚を採用している。しかし、コシナは約半分の重量と1/4の価格、そして近接撮影距離50cmという魅力的なスペックで勝負に出た。今後比較レビューが巷に氾濫することは目に見えているが、両者の価格帯(=品質レベル)が違うとはいえ、最近のVoigtlanderの性能もビルドクオリティも格段の熟成度を誇る点からもColor-Skoparの性能・評価には興味津々である。重箱の隅をつつくような比較レビューではなく、例えばA4サイズの写真10枚以上をブラインド掲載し、描写の好みやレンズの違いを読者に判断(推論)させるくらいの大胆な比較を提案したい。

【名駅近辺・柳橋中央市場での作例は全てJPEG撮影のみ】

参考までに以下の画像は全てM11によるJPEG撮影(一部明暗調整あり)。
今回は暗所撮影時でもSS1/30、ISO400、f5.6で試みた。
場所は名古屋駅東側の一等地にある高層ビルの谷間の「柳橋中央市場」。
魚介類を中心に精肉店や各種食堂、一杯呑み屋も軒を連ねる美味しい場所だ。
「東海の台所」と呼ばれるほどに「見て楽しい、食べて美味しい場所」なので、散歩がてらでも是非おススメの観光スポットでもある。年末には上野アメ横にも似た大混雑となり、インバウンド外国人観光客も増えている。

M11に手振れ補正機能はないので、かつての愛機OM-1+Zuiko28mmのフィルム感覚でマニュアル撮影を楽しんできた。TTArtisanの抜けの良い描写が心地良い。

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

【オリジナルの角型フードも良いが丸型は実用性が高い】

サードパーティー製の丸型フードも愛用している。
気分的には角型が一番似合うが、実用面ではバッグへの出し入れ時等で丸型フードの方が諸々の干渉が少ないので扱い易い。気分次第でフード選択が出来るのも有難いところだ。
フィルターにはMARUMI製・同色シルバーカラーのMC-NORMAL37mm径を装着。
過去、内外の色々なメーカーを使ってきたが、結局、今ではMARUMI製に落ち着いている。
マップカメラ製の刻印無し薄枠フィルターも実はMARUMIによるOEMなので使い易い。

***

蛇足だが、ライカと言うメーカーは唯一無二の哲学を誇るとしみじみと感じている。
日進月歩の最新機能と技術力が勝負のデジタルカメラにおいて、フィルムカメラのM6を復刻させたり、レンズでは旧式の光学系そのままでかつての銘玉を復刻させた28mm「ズマロン」や35mm「スチールリム」を世に送り出すなど、日本メーカーとは真逆の方向性を見つめつつも、最新技術面ではPanasonicとも提携するなどして抜かりが無い。


日本ではライカを知り尽くしたコシナがそうした復古調デザインのレンズを出しているのが嬉しいところだ。中国製メーカーでも今回のTTArtisanを始めとして数社がM型ライカ用のニッチなレンズを意欲的に商品開発している。厳しく言ってしまえば他社と横並びの商品では到底、大手メーカーには太刀打ちできない群雄割拠のデジタルカメラ業界において、そうした独自性ある思想と方向性には大いに賛同するのである。

.

.

.

.

.

『智に働けば角が立つ。』
丸型フードは角が無いので使い易さでは一番だ。

.

.

「一粒で二度美味しい」X-Pro3との相性も抜群だ。

.

(2023/8/18公開)4958        ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2024年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

おすすめの関連記事

2 Comments

  1. 鈴木隆浩

    TTArtisan 28mm f/5.6お持ちだったんですね。知りませんでしたがすごく良い写りですね。
    日の差さない場所(居酒屋内など)のほうが、色合いもいいなって思うくらい、メリハリのある素晴らしいレンズだなって思いました。
    それにやっぱり、小ささ軽さは最大の魅力だと思います。
    現在の私は、例のフォクトレンダーカラースコパー28mm f2.8ですごく満足していますが、35mm持ってても、21mm持ってても、なんだか28mmって、使いたくなるんです。
    楽しいフォトウォーク&JPEG撮って出し画像、ありがとうございます。
    37㎜径の28mm用丸型フード、どこ製ですか?よく見つけましたね。

    1. ゼンマイオヤジ

      新型カラスコ28mmもTTArtisanも抜群の携帯性を誇ります。丸型フードはZEROPORT JAPAN製。Amazon界隈で豊富に見つかります。GM1用12-32mmズームにも同じ37mm径フードを装着しています。薄枠設計なので換算24mmまでケラレも無く快適です。

鈴木隆浩 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です