“「ドイツ海軍潜水艦U-995」を見て来た”

バルト海クルーズ最後の寄港地はドイツ北部の都市キール(Kiel)。
キールは地形的にはフィヨルドで水深が深く、昔から海事産業や軍港として栄えていた。そんな背景から第二次大戦では徹底的に爆撃・破壊されてしまい、今日のキールは東京と同様に戦後復興で出来たものと言っても過言は無かろう。

クルーズ船の乗客の多くはキール市内ツアーに出掛けたが、ここで自分が目指す場所はキールの北東約10kmにあるラボー海軍記念館(Marine-Ehrenmal Laboe)であり、そこで展示されている旧ドイツ海軍の誇る潜水艦「Uボート」ことドイツ軍潜水艦U995の見学に他ならない。腕時計でも”U-BOAT”は有名だが、その語源でもあるドイツ潜水艦は先の2回の大戦を通じて約1400隻以上が製造され、相手国の商船を目標に大きな戦果を挙げた。第二次大戦でも連合軍を悩ませ続けたが、その古さと魚雷の発火不良等の欠陥から大戦末期には逆に攻撃目標となりUボートは大打撃を受ける結果となる。

***

早速、キール上陸後にメルセデスのタクシーでラボー(Laboe)を目指した。
「ラボー海軍記念館」はバルト海に面しており、夏場には海水浴場にもなる人気の観光地でもある。そこに「ラボータワー」と呼ばれる72mの展望台がある。「ラボータワー」の傍に第二次大戦時代のUボート”U-995″が展示されている。この潜水艦は「タイプⅦC/41型」と呼ばれるUボートである。

ラボー海軍記念館(別名ラボータワー、ドイツ語:マリンエーレンマルラボエ)は、1936年に完成した。もともと第一次大戦の戦死者を追悼記念したものだが、1945年以降に第二次大戦におけるドイツ海軍の戦没者が追加され、更に1954年には海で失われたすべての国籍の船員の記念碑として、同時に外洋での平和的な航海の記念碑として捧げられた。

ラボータワーの足元には靖国神社宮司名の記念プレートを日本語で見ることが出来る。

サンクトペテルブルグを出発して翌日は洋上移動日。足掛け2日をかけてドイツのキール湾に入った。
歴史的な軍港でもあるが、こうした穏やかな光景が印象的なキール。
キールの鉄道中央駅Hauptbanhof
早速タクシーに乗り込み一路ラボーを目指す。
70年代の近未来的デザインのアメ車・AMC ”Pacer”に遭遇。
道路標識は全てドイツ語。英語が無い。
キールから502号線で約10km北上する。ラボーまで約30分。
風力発電はクリーンエネルギー100%を目指すドイツのシンボル的存在。
ラボー到着。左が海岸でU995が見える。右の茶色いラボータワーが海軍記念館。
全長67mの巨大なU995(VIIC/41型)の全景。乗員44~52名、最大安全潜航深度約120m。
第二次大戦中、巨大軍用艦を持たない旧ドイツ海軍は安価で小型な潜水艦を量産してゲリラ攻撃に活用した。

左側の艦尾から入って艦首から出てくるのが見学順路だ。
このU995は大戦末期にノルウェーに接収されてノルウェー潜水艦となり、
1971年に当時の「西ドイツ」へ1マルクで売却されてこのラボーで展示されるに至る。
潜水艦内はディーゼル機関の排気臭とキッチンの臭い、加えて乗務員の体臭で酷かったそうだ。
風呂にも入れない乗務員は香水を多用した為にそのブレンドされた臭いを想像するだけでも息苦しい。
耐圧室として全部で6つのコパートメント(区画)に分かれている。
艦首側の第1区画から順番に写真紹介する。
第1区画:前方魚雷発射管室。船首4門、船尾1門。合計最大14発を搭載。
乗組員は寝台に置かれた6本の予備魚雷の上で寝ることもあったそうだ。
魚雷発射後は乗務員用にスペースが出来るので誰しもが発射を待ち望んでいたという。
第2区画:電動機と司令部の士官用コンパートメント(区画)
第3区画:操縦室・司令室
これは潜望鏡
第3区画:潜望塔(ハッチ)への階段。攻撃中の艦長はこの階段上にいることになる。
各種の計器はスイス製が多い。
第4区画: 食堂兼居住区。とても狭い。
電信室
トイレ・洗面所は一つのみ。倉庫としても多用された。
第5区画:ディーゼル機関室。そして第6区画は後部魚雷発射管室となる。
お馴染みのコインをつぶして造るメダル機械はアメリカ発祥。これは€5セント硬貨用だ。
日本国内では貨幣を潰すことは「貨幣損傷等取締法」で禁止されている。
写真右端の樹が靖国神社から贈られた銀杏と思われる。
海軍記念館の内部。
ラボータワー展望デッキから見るラボー海岸。ヨットの帆が平和な今を感じさせる。
キール市内に戻ってきた。
ドイツの港町らしい看板。
ドイツ人観光客はここで下船する人が多い。同時に新たなる乗船客を受け入れる。
自分は乗船地のコペンハーゲンで下船する。
キール湾を後にして、乗船地のコペンハーゲンへと移動する。

今回のバルト海クルーズのご紹介はここまで。
地中海クルーズもエーゲ海クルーズも冬場は運航していないので、5~9月がシーズンとなる。特に地中海クルーズは日本からの乗客も多い人気航路なので、興味ある方にはおススメだ。その辺の情報も今後、FOTOLOGとして紹介してゆく。

乞うご期待。

.

(2023/7/19公開)4017      ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2023年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

おすすめの関連記事

2 Comments

  1. 鈴木隆浩

    バルト海クルーズ、お疲れ様でした。
    潜水艦なんて、中を覗いたことないです。
    どこの港も雰囲気があり、素敵です。
    それにアメ車や建物の造形は、なかなか日本では見られないですね。
    次かる旅は何処へ。^_^
    楽しみです。

    1. ゼンマイオヤジ

      「潜水艦内」に入ったのはLAのDisneyLand以来でした。
      流石に本物のU-BOATは背負っている歴史と人命が重すぎたので物凄い迫力がありました。
      色々と考えさせられたU-BOATです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です