【突然、車窓から見えた平城京跡に戸惑った】
近鉄奈良線で平城宮跡に差しかかると、突如として広大な歴史空間が眼前に広がる。
列車がその中心を貫く光景はまさに圧巻で、思わず息を呑んだ。
復元された朱塗りの第一次大極殿が青空に映え、古都の威厳を静かに語りかけてくる。
シャッターを切る間もなく、その壮大さを胸に刻み奈良駅へと到着した。
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【奈良駅と鹿】
地下にある奈良駅から地上へ出た瞬間、そこはすでに“奈良の顔”。
近鉄奈良駅前には、当然のように鹿たちが佇んでいた。
「到着直後の駅前で、既に鹿と出会うとは・・・」
通勤・通学で多くの人々が地上駅前広場から目的地へ急ぐ中、
人の流れに溶け込みながら、静かに観光客を迎えるその姿に驚かされると同時に、
奈良に来たことを、これ以上なく実感する瞬間となる。
都内第4学区の中学生時代に、奈良・京都を修学旅行で訪問した記憶が蘇ることも無く、
見るものすべてが新鮮に感じられる今回の「再訪」となった。
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今回の撮影機材はX-Pro3に24-75mm相当のインナーズームレンズ1本のみ。
この画角であれば、略1本で全てが事足りる。
欲を言えば広角側20mmから120mm位までをカバーするレンズを持参すれば良いのだが、
今回のようなフォトウォークでは小型軽量の24-75mmで十分だろう。
あとは足と構図でカバーするだけだ。
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バリアングルが嫌いな理由は撮影視線がレンズ光軸から離れてしまうことに尽きる。
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【横断歩道の鹿】
信号が赤でもお構いなしに横断歩道を渡る鹿たち。
その自由気ままな振る舞いに対し、車はきちんと停止して待っている。
人と鹿が共存する奈良ならではの光景に、思わず頬が緩む。
ここでは鹿こそが主役なのだと実感させられる一コマ。
地上でも地下道でも、ここでは「神の使い(=神鹿:しんろく)」が最優先だ。
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【南大門の仁王像】
東大寺 南大門に足を踏み入れると、巨大な仁王像が圧倒的な存在感で迎えてくれる。
阿形・吽形の力強い表情と躍動感あふれる姿は、まさに圧巻。
木造とは思えぬ迫力が、訪れる者を一瞬で古の世界へ引き込む。
歴史の重みを肌で感じる瞬間である。
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1203 年に完成した巨大な木造の寺の門。2 層になった屋根と 2 体の金剛力士像で知られる。
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割り切ってそのままAF撮影するのも良いが、手動に切り替えて撮影すると、
画面がピンポイントで部分拡大されるので、狙った被写体と確実に向き合える。
やはりX-Pro3でもマニュアル撮影は楽しい。
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【大仏殿正面】
東大寺大仏殿を正面から見上げると、その巨大さにただただ驚かされる。
世界最大級の木造建築が堂々と構え、悠久の時を語る。
広い境内と相まって、訪れる者に静かな畏敬の念を抱かせる。
まさに奈良観光の象徴ともいえる景観だ。
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もうすぐ東大寺境内も桜の花で賑わいそうだ。
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東大寺創建当初のもので、再度にわたる兵火にも難をまぬがれた「八角灯篭」は日本最古。
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【奈良の大仏と四天王たち】
堂内に入ると、巨大な東大寺盧舎那仏像が静かに鎮座している。
その周囲には守護する諸像が並び、荘厳な空気をさらに高めている。
圧倒的なスケールと精緻な造形に、時間を忘れて見入ってしまう。
仏教美術の極致ともいえる空間である。
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四天王の持国・増長の二天は焼失後の再建が未完成で、素木(しらき)の頭部のみが残った。
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右手は施無畏印(せむいいん)と呼ばれる手のひらを前に向けて「恐れなくともよい」という相手を励ますサイン。
左手は与願印(よがんいん)と呼ばれる手のひらを上に向けて「願いをかなえる」サイン。
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そのせいか、木像だが光り輝く色艶を放っている。
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【奈良公園の鹿たち】
奈良公園一帯には、実に多くの鹿たちが自由に歩き回っている。
観光客に近づき、時に愛嬌を振りまくその姿はとても愛らしい。
広々とした自然の中で、人と動物が共存する風景が広がる。
奈良ならではの穏やかな時間が流れていた。
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奈良公園の鹿は天然記念物に指定された野生のニホンジカ動物であり、現在約1,500頭が生息している。主食は芝生やドングリなどの自然植物であり、人間が与えることができるのは消化の良い米ぬかで作られた鹿せんべいのみ、がルールだ。
その優れた嗅覚と人間の行動を見る眼は鋭い。
鹿せんべいを買った瞬間に集まってくる積極性には圧倒される。
ダウンジャケットのポケットに鹿せんべいを入れていたら、不意に鹿がポケットを狙ってきた。
攻撃的とまでは言わないが、鹿はあくまで野生動物であることを再認識した瞬間でもあった。
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【興福寺国宝館で至福の時間に溺れる】
興福寺国宝館は僧侶が集団で食事をする食堂(じきどう)が建てられていた場所に、
鉄筋コンクリート造りの耐火式宝物収蔵庫として建造されたもの。
歴史の深さを改めて感じるとともに、国宝館の木像展示には圧倒されっぱなしだった。
今回の奈良訪問は東大寺大仏殿と、この国宝館訪問が目的だ。
特に1300年前に作られた「阿修羅像」を眼前に出来たことが嬉しい。
残念ながら五重塔は修復中だが、復元された中金堂や南円堂が美しく佇む。
鮮やかな朱色の建築が青空に映え、見応え十分。
古都の風格を感じる3月初の冷ややかな空間に、我が身を置けた喜びに浸る。
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【帰路へ(道頓堀へ)】
ひがしむき商店街を撮影しながら歩き、奈良の賑わいを最後に味わう。
そのまま足早に抜け、次の目的地へと気持ちを切り替える。
午後は大阪の道頓堀散策へ。
再び近鉄線に乗り込み、旅は次の舞台へと続いていく。
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人の記憶は必ず薄れる。
薄れた記憶は写真が救う。
カメラは記憶のタイムマシン。
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(2026/3/27公開)201600 ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。
