“SNAP BAKU@AZERBAIJAN”                      (アゼルバイジャンの首都バクー訪問記)

【アゼルバイジャンは国民の97%がイスラム教徒】
トラベルカルチャーマガジンの「TRANSIT」最新号#61はイタリア特集だが、同誌の年末12月に発売予定の次号は「コーカサス特集」だという。
そうであればコチラは一足お先に参りましょう。
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「火の国」アゼルバイジャンの首都バクーで世界遺産を見てきた。
同国の面積は日本の約4分の1だから北海道と兵庫県を足した面積に近く、人口は神奈川県の1割増の約1000万人ほどながら、石油や天然ガスの豊富な資源に恵まれており「火の国」とも呼ばれている。
1991年に旧ソビエト連邦からの独立を果たし、国民の97%がイスラム教徒であり、地理的には欧州に分類される。東にカスピ海、北にロシア、西にジョージアとアルメニア、南にイランと接している。つまり、アゼルバイジャンのあるカスピ海の西側が「欧州の極東」に相当し、東側が中央アジア諸国となる訳だ。

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アゼルバイジャンの首都バクーは、ペルシャ語で「風の街」を意味し、その名の通り一年の多くの日で強い風が吹いていると言われるが、幸いにも今回の訪問時には強風も無く、非常に快適な気候だった。

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今回滞在したホテルはカスピ海沿いのリゾートホテル「Ramada by Wyndham」
ビーチには砂浜もあるのだが、その奥行きは狭い。

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【カスピ海は世界最大の塩湖】
コーカサス(=カスピ海と黒海の間に位置するアゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアの三ヵ国の総称)の中でも最大の都市で、また、一番大きな港がある港湾都市でもある。恐らく、日本人には「カスピ海ヨーグルト」や「キャビアの産地」くらいしか連想しない場所ではなかろうか。カスピ海は世界最大の湖(塩湖)であるが、沿岸五か国の協定によって「海」と定義されている。

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今回はカスピ海に面したリゾートホテルに滞在したが、部屋から見える光景はご覧の通りだ。眼前の洋上に鎮座するのは、凡そリゾート地には不釣り合いな巨大なる「原油ガス・プラットフォーム」の現実だ。横浜港の「ガンダム」ではあるまいし、神戸若松公園の「鉄人28号」でもあるまいし、気分的にはそんな機械モノが目の前にある海に入るのは何とも興覚めである。
心なしか海岸で水遊びをしている人々もまばらな感じがしたのはそのせいだろうか。
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今回滞在したホテルからの眺め。日本人には特異な光景だろう。
カスピ海上にはこのような石油掘削用のリグ(石油プラットフォーム)が立ち並んで見える。
正直に言えば、沖合にこの海上石油リグを見せつけられて「リゾート」と言われても・・・

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【ゾロアスター教の歴史を垣間見る】
歴史的にゾロアスター教(拝火教)は古代ペルシア地方が発祥の地とされ、紀元前6~7世紀に誕生した「世界最古の一神教」とも言われている。
このアゼルバイジャンの首都バクーもペルシア人の「ゾロアスター教徒」が多く住んでいた街としても有名であり、紀元後3世紀にササン朝ペルシアでは国境にも定められて中央アジや中国へも広く伝番したという。古来よりゾロアスター教の拝火壇などの宗教施設が多数建立されていたが、その後、アラブ人が増えるにつれイスラム教も広まり、更には現在のアゼルバイジャン人の先祖に当たる遊牧民が侵入することになる。

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今回は同国初の世界遺産(文化遺産)として2000年に登録されたバクー旧市街の中にある「乙女の塔」を訪問した。元々はゾロアスター教の寺院として建造されたものを12世紀に石壁造りの頑丈な塔として再建したものだ。また、同地には13~16世紀に栄えたシルヴァン王朝の宮殿で、その名も「シルヴァン・シャー宮殿/Shirvanshakh’s Palce」も世界遺産の一部として形成されており、王族の霊廟やハマム(浴場)、モスクなどの見どころも満載で異国情緒にどっぷりと浸かりながら散策する楽しさは中東とも異なる独特なものだ。

バクーはかつて二重の城壁で囲まれた城壁都市であり、
今では12世紀末に造られた内壁だけが残る旧市街となっている。
Monorit Plaza Hotel前にあるアゼルバイジャンの風刺詩人、サビール(Mirzə Ələkbər Sabir)の像。
バクー市内ではこうした歴史上の偉人の銅像が30カ所くらいで見られる。
旧市街近辺も昔からの石畳や旧式のバルコニーを備えた建築物が多い。
この円筒形の建物が『乙女の塔』(Maiden Tower)
高さ約30m、壁の厚さが4~5mもある11~12世紀に建てられた強固な石塔である。
当時の王様の娘(王女)が結婚命令に従わず、この塔から身を投げたことに由来するとも言われている。
荘厳なる雰囲気を醸し出す王族の霊廟。
ハマム(浴場)と思われる個室が並ぶ。
「乙女の塔」の受付で入場料を支払う。
「乙女の塔」の内部にある螺旋階段で屋上まで登ることが出来る。
「乙女が眺める乙女の塔」

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荘厳な建築はバクー政庁。

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【拝火教寺院・アテシュギャーフ】
場所を移動して「拝火教寺院・アテシュギャーフ」を見学。
バクー市内の場所によっては1~2mも掘れば天然ガスが出るために自然に発火する為に、火を神と崇めるゾロアスター教のペルシア人が寺院を建立していた。その後、アラブ人の侵入により拝火教の寺院が破壊されたものの、17世紀に入るとインド商人が拝火教の寺院を再建したと言われている。

ゾロアスター教の寺院・アテシュギャーフ/Atashgah Fire Temple
「アテシュ」は「火」、「ギャーフ」は「家」という意味だ。火は古来、信仰に影響を与えてきた。

空の玄関口であるヘイダル・アリエフ空港近くには古代から「永遠の火」と呼ばれる火が灯っている。

17世紀から18世紀初めまでに再建されたこの寺院には年間約30万人が訪れるそうだ。

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【燃える山、ヤナル・ダク】
バクーの北へ少しいったところにヤナル・ダグ(Yanar Dag)という丘のような小山がある。この斜面には地下から噴き出る天然ガスに絶えず燃焼している。写真では分かりにくいが、オレンジの炎が消えることなく昼夜燃え続けている。
夜間に見るともっと幻想的で迫力もあることだろう。こうした「燃える大地」があることからも拝火教が盛んであった背景と歴史が垣間見える。

燃える山ヤナル・ダグ
炎は地中から湧き出た貴重な天然ガスが自然発火したもの。
バクー市内では陸上でも石油採掘の光景も広がっている。正に天然資源の国である。
お決まりのキャビア土産。

今回は、伝統的な名所旧跡にスポットを当てたが、資源国家の例にもれず、近年のバクー市内にはドバイのように近代的で奇抜な建造物も多く登場し、オイルマネーやLNGマネーによる繁栄の一面を見せている。トルコや欧州からの「横移動のフライト」もあれば、ドバイや中東からの「縦移動のフライト」も多い。逆にドバイにいると国名に「~スタン」と名が付く中央アジア諸国からの旅行者も非常に多いことに気付かされる。

カスピ海沿岸地域への旅行も極めて貴重で興味深い体験が出来ることは間違いないだろう。首都バクーは治安も比較的良好であり、興味ある方は予備調査を是非どうぞ。

(2023/9/28公開)8363

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2023年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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2 Comments

  1. 鈴木隆浩

    Tommyさん、アゼルバイジャンなんて、
    すごいところにまで行かれているんですね。
    本当にすごいです。
    Tommyさんほど、あちこち経験されている人は
    なかなかいないと思います。
    私の知り合いのなかではいないです。
    とても美しい海や歴史のご紹介に感謝です。

    1. ゼンマイオヤジ

      コメント有難う御座います。アゼルバイジャンはトルコや中東訪問経験者には更に味わい深く楽しめる場所です。それにしても現在の為替が1ドル149円台のご時世では海外旅行は文字通り「高嶺(高値)の花」になりました。実に悩ましい状況です。

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