『ライカM11・防塵防滴性能についての考察』

1. 防塵防滴は今や重要な機能の一つである:

M11ユーザーにとって、懸案のフリーズ問題ファームウェアアップデートで一応の解決を見た現在、残る興味として防塵防滴性能がある。一般的に屋外撮影やネイチャー撮影の機会も増える状況下、国産ブランドはJIS規格に沿った防塵防滴対応も機能の一つとして盛り込むモデルが増えている。ライカも当然対応している。ライカQ2ではIP52を、SL2/SL2-Sでは更にランクアップしたIP54の国際規格をクリアしていることが公表されている。しかし、MシリーズでIP基準をパスしたモデルはまだない。それではM11の対策はどうなっているのだろうか。今回は僕の推測も含めた現状と見解を整理してみる。

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近年の地球温暖化の影響もあり突然のゲリラ豪雨などによる予測のつきにくい天候の急変が世界中で多発している。都市部なら近くの建物で雨宿りも可能であろうが、旅先や自然界に身を置いた状況では突然の雨天は容易には歓迎できない。問題はカメラ本体とレンズ側の問題がある訳で、どちらか一方が非防塵防滴であると対応が難しい。M11の場合、正にオールドレンズも多用するので問題が多いと思われる。結論から言えばカメラとレンズのパッケージで考えた場合、現時点ではM11は『非対応』と理解する方が無難である。

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2. 防塵防滴の「IP52」とは何か:

まず、基本知識としてライカQ2の「IP52」を例に考えてみる。
「IP52」とは、IEC(国際電気標準会議)およびJIS(日本工業規格)で定められた電気機器内への異物の侵入に対する保護等級参考1(JIS C0920)の1つのこと。IPはIngress Protection(侵入に対する保護)の略で、IPの後に続く数字がそれぞれ「防塵」と「防滴」の性能を表している。
具体的に意味するところは、数字の十の位が防塵ランク(0~6)、一の位が防滴ランク(0~8)である。
つまり、「IP52」の意味するところは、
5=防塵(若干の粉塵の侵入があっても所定の動作および安全性をを阻害しない)
2=防滴(15度傾けたときに真上から落ちてくる水滴からの保護)
簡単に言えば、IP52とは、『動作に影響を及ぼす以上の粉塵が内部に入らず、15度傾けたカメラに落ちてくる水滴によって有害な影響を受けない、という国際規格をパスしている』という意味である。防滴ランクは8段階の下から2番目のレベルなので決して高いとは言えない。個人的にはSL2/SL2-S同等のIP54以上は欲しいところだ。因みに、『水滴』とは蛇口から出る水圧がかかった水道水などではなく、木の葉から落ちる『しずく』程度を意味する。これでは秒速7~10m参考2で落ちてくる雨天まで対応するレベルとは到底言えないだろう。

参考1】防塵防滴保護等級に関するCanonの説明はコチラ
参考2】気象庁の解説に基づく。
【参考3】i-Phoneの防塵防滴性能はコチラ。最新機種ではIP68を達成している。防塵防滴共に最高ランクで、水没までクリアするという強靭なi-Phone性能には改めて感心する。

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3. ライカM11本体の防塵防滴はどうなっているのか:

本件に関してはライカ社からは何も公表されていない。と言うことは、非対応と考えるのが妥当であるが、それでは無策で何もしていないのか、と言えばそうとも言えない。その根拠を以下列挙する。

根拠その1) 
前モデルM10のWebカタログでは、『ほこりや水滴からボディをしっかり保護するために、特殊なラバーシールを施しています』と書かれている。即ち、IP 等級は不明ではあるが防塵防滴の為にシーリング材を利用しているので、以下の写真のような『水滴』であれば直ちに拭き取ることで保護対応していると言えるだろう。あくまで推測の域は出ないが、M10とM11では本体デザインが略同じなので、M10で施されたラバーシールはM11でも引き継がれていると考えるのが自然の流れである。

上写真はライカM10の公式HPより引用。

根拠その2)
M11の底面にあるバッテリーの底側には幅2mm程度の太いラバーシールが施されている。従来あったベースプレートを取り除いたことによる対策だろう。一方で、Type-C端子が剥き出しになっているがこれはi-Phoneでも同じこと。恐らく、ライカ開発陣はC端子は剥き出しでも最低限の防塵防滴性能は担保できると考えているのであろう。バッテリー蓋部分のみラバーシールを施し、その他の部分では何もしない、ということは到底考えられないのである。

M11用の大型バッテリー。約2mm幅の厚いラバーシーリングが見てわかる。
筆者のType-C端子にはSONY製ラバーキャップを別途装着している。

根拠その3)
デンマークの写真家Thorsten OvergaardによるM11レビュー記事で、彼は面白おかしくこう述べている(以下の英文を引用する):
Leica M11 is weather sealed
Even the Leica M9 (2009) did pretty well in rain and show, and since then Leica Camera AG have weather sealed their cameras more and more.

They will never issue any guarantee, so it’s up to you to judge.
Look at the rubber band on the battery, closing the department of the battery and the SD-card. The USB-C is exposed, but so is the USB-C on many smartphones. The ISO dial is an external dial that connects to the camera’s inside via magnets (so no water in that way).

This, I fear, is how close we ever will get to and definition of how weather sealed the Leica M11 is. Just don’t go snorkeling with it.”

DeepL翻訳ツールによる訳文は以下の通り:
“ライカM11 はウェザーシールされている
ライカM9(2009年)でも、雨やショーでかなり活躍しましたし、それ以来、ライカカメラAGはカメラのウェザーシールをどんどん増やしています。
ライカカメラ社は保証を一切しないので、判断はあなた次第です。
バッテリーのゴムバンドを見てください、バッテリーとSDカードの部署を閉じています。USB-Cが露出していますが、多くのスマートフォンのUSB-Cも同様です。ISOダイヤルは、磁石でカメラ内部に接続する外付けダイヤルです(だから、そのような方法で水は入りません)。
ライカM11がどの程度ウェザーシールされているのか、その定義に近づくことができるのか、私は心配しています。ただ、シュノーケリングはしないようにしましょう。”

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ライカ社として防塵防滴性能を重視していることはStefan Daniel副社長もSL2開発インタビューで答えている通りなので、最新モデルのM11だけが『無策の丸腰』とは到底考えられない。よって、少なくともM10同等のラバーシールは施されているものと推測している。

根拠その4)
このライカ公式YouTube動画をご覧頂きたい。”Joshua K. Jackson – Friday Night Lights”と題名されたロンドン市内で雨天時に撮影している映像が非常に刺激的だ。M11+アポズミクロン35mmF2が雨中でびっしょり濡れながら使われている。流石にこの動画を観た視聴者からはコメント欄で「非防水」を心配する声が上がっているが、ライカが敢えてこの動画を載せているということは我々はその『行間』を読む必要があるだろう。(もしかしたら防塵防滴仕様のプロトレンズか!?とまで僕は邪推してしまうのだが///)

以上、4つの理由からM11はM10同様のシーリングが施されている、と考えるのが持論である。

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4. 最大の問題は交換レンズ側にある:

仮にM11に何らかの防塵防滴対策が施されているとしよう。問題は一緒に使うレンズである。カメラが濡れればレンズも濡れる。カメラが砂塵に晒されればレンズも同じだ。オールドレンズは『完全非防水』で対象外だ。M11ではオールドレンズを使う機会も多いが故に、M11の防塵防滴性能だけを謳っても意味がないことになる。


ここではあくまでライカ現行Mマウントレンズに絞って考える。ライカMレンズにまでラバーシールが施されているという情報は残念ながら得られていない。更に言えば、VMマウントのフォクトレンダーのレンズでもウェザーシールは施されていない。よって、いくらM11が防塵防滴であってもレンズが追い付いていない現状では、ライカとして声を大にしてM11の防塵防滴性能をアピールすることが出来ない事情があると推察する。
上記のJoshua Jacksonが使用するアポズミクロン35mmはもしかすると特別な対策がなされているかも知れないが、ライカ社より『IP宣言』が出されていない以上、またテクニカルデータにも何も記載がない以上、全ての責任はユーザーに帰すことを忘れてはならないのだ。
※SLレンズでは防塵防滴がモデル毎に説明書きされている。

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上記の通り、今後の課題はMレンズの防塵防滴性能を確立することである。
ラバーシールを装着すればその分重量が増え、スペースも必要になる。構造上、設計変更も必要になるかも知れないが、時代はMレンズと雖もウェザーシールを求めている。雨に濡れるのを躊躇して撮影を諦めたり、濡れることに神経を使いながら撮影することもユーザーとしては本意ではないだろう。また、日本のように高温・高湿度の期間が長い地域ではレンズの曇りやカビ対策の観点からもレンズの防塵防滴処理は大きな必要性に迫られている。冷房の効いた部屋に入れば「結露」と言う問題も待ち構えている。

昔はカメラもレンズも皆、非防水であり、その為のカメラ用レインジャケットも市販されているほどだ(現在でも)。しかし、時代と写真を取り巻く環境は着実に変化している。IP等級を取得したMレンズの開発は今や喫緊の課題であり、全世界のMユーザーも待ち望んでいるものと確信している。

是非ともSLレンズと同様に、今後の新Mレンズから全てを防塵防滴対応のWeather Resistantにして頂きたい。ライカMユーザーからの心よりのお願いであります。

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(注意) 
以上は全て筆者の持論でありM11のシーリングについて保証・断定するものではありません。
水没と落下だけは絶対に避けて、全て自己責任の下で安全第一で撮影を楽しんでください。

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(2023/3/11公開)897   ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2024年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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2 Comments

  1. 鈴木隆浩

    素晴らしい考察、ありがとうございます。
    M11がビショビショの動画は、私も何かで観たことがあり、ありゃっと思いました。
    しかし、その時は、あ〜ぁ、、、というだけの印象だったのですが、バッテリーのパッキンとかを見たときは、こういうの防水のパッキンに似てるなと思っていて、なんのなくM11は防塵防滴なのでは?
    と思ったこともあったんです。
    でも、お書きになられている根拠を全て読むと、防塵防滴は、確信になりますね。

    とはいえ、やはり濡らしたくはないですが、本当に内容の濃い考察、感謝です。
    今度、私の動画でも、このTommyさんのブログを紹介しつつ、防塵防滴をちょっとだけアナウンスしてみようかなと思いました。

    レンズの防塵防滴の一本販売されたら、買ってしまうだろうという確信にもなりました。(^◇^;)

    1. ゼンマイオヤジ

      コメントを有難う御座います。M11の防塵防滴論がMレンズに矛先を転じるというオチになりました。こんなことを考えつつ撮影するのもこれまた一興です。

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