【旧型SEIKOはSEIKOの実験台。豊富なデザインには舌を巻く】
もう何年も前から発売されていたようだが、
まさかSEIKO5でB-Uhren(=複数形Uhren、単数形Uhr)デザインがあるとは思わなかった。
B-Uhrenとはご承知の通り、ドイツ語のBeobachtungs-uhrenの略。
即ち、英訳すればObservation watch、直訳すると「観測用時計」となる。
偵察用時計、爆撃用時計等の意訳もあるが、語彙からの意味は上記となる。
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B-UhrにはType-A、Bの2種類あるが、このSEIKO5はType-B相当。
Type-Bの文字盤外周には正確な秒把握が出来るように秒専用のINDEXが配置されているのが特徴だ。A、B両モデルの違いはこうなる↓

(背景の写真は1990年6月20日初版発行の光文社文庫「軍用時計物語」286頁より引用)
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これもType-Bに相当するが、センター部分のアワーマカーが省略されて判読性が向上された名作だ。
分針・秒針共に円周上のbar indexまで届いているところが流石のベルロスである。
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B-Uhren用の特徴的な2鋲打ちされたレザーベルトと
独特の12時位置の▲indexが気分を盛り上げてくれる。
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コスパ観点からは『宇宙一』との噂も高いSEIKO5であるが、
ドイツ空軍用時計のデザインまでカバーするとは改めてそのデザインの豊富さに驚く。
日独伊三国同盟の名残とでも言うべきか・・・
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復習となるが、ドイツ空軍にB-Uhrを供給したのは、ドイツ国内では、
A. Lange&Söhne、Wempe、Lacher&Company/Durowe(Laco)、Walter Storz(Stowa)
そしてスイスからはIWCであった。
WempeはThommenのキャリバーを利用し、StowaはUnitas 中心だった。
LangeとLacoは自社キャリバーであったが、組立キャパ問題から生産数に限界が生じた。
これを解決したのは1938年にハンブルグの製造業者を買収したWempeの功績が大きい。
即ち、Wempe工場に於いてLangeとLacoの時計の組み立ても手助けしたのである。
そんな歴史が現在の各社間の関係にどんな影響?を及ぼしているのか想像するのも楽しい。
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ひときわ目立って良いアクセントになっている。
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【ケースのシルバー艶消しが凝っている】
このケース素材は一般的なSS製だが、表面塗装がシルバーのザラついた仕上げであり、丸でアルミかチタングレーのようにも見える。機内コクピットにおいて直射日光の反射を極力抑えて視認性を高める工夫だが、同時に反射を抑えることでステルス性を高め、「敵」に発見されにくいことも目的としているのだろう。勿論、ファッション時計であって実戦用ではないのだが、こうした細やか点まで念頭に置いているところが遊び心あふれる旧SEIKO5らしい所以であり、「SEIKOの実験台」と呼んでいる理由でもある。
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現在のSEIKO5はロゴもムーヴメントも変更して、良くも悪くも一皮むけてしまった。
価格もそれなりに値上がりして相応に仕上げも向上してはいるものの、古くからのSEIKO5に慣れ親しんできた自分にとっては、特に輸出用や現地生産されて豊富なデザインを持つ「旧SEIKO5」は今でも非常に魅力的だ。
今回のモデルもシースルーバックで、そこからはそっけない仕上げのCAL.7S26Cが見える。
SEIKOの専売特許である自動巻き用の「マジックレバー」を見ながらこの時計を装着すると、時計ってこれ1本あれば日常生活で困ることは何もないと思わせてくれる。
因みにクラスプはプッシュ式のシングルバックルで、これまた断然、使い易い。
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【SEIKO5の命名理由とは】
本来の命名理由は以下の5つの特徴からと言われている:
①デイ・デイト表示 ②切れないゼンマイ(ダイアフレックス)
③耐震装置(ダイアショック) ④自動巻き ⑤防水機能
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一方で、筆者が海外ディーラーから直接聞いた話では、
東南アジや南西アジア、中東諸国で特にSEIKO5が高い人気を誇る秘密は、
①正確で頑強 ②デイ・デイト表示 ③電池交換が不要な自動巻 ④コスパが良い
⑤信頼のSEIKOブランド、の5点とのこと。
特に③の自動巻きについては電池交換が不要で、故障のリスクも極めて少ないことが東南アジアからの出稼ぎ外国人には人気が高い理由だとか。
なるほど、確かにデイト表示は英語以外でもアラビア語やスペイン語、中国語、ローマ数字による曜日表示等々、複数多言語を取り入れており、長年、電池交換不要で動くタフで廉価な機械式のSEIKO5が受ける理由が良く分かるのだ。
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(2025/2/7公開)82600 ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。
