“20年来のローファーよ、永遠なれ”

【23年前に購入したROCKPORT®のシングルモンクローファー】

ドバイにて、猛暑と喧騒のはざま、老舗ショッピングモール「CITY CENTRE」の深奥にて出会った一足の革靴がある。
それは米国のボストンで生まれたROCKPORT®ローファーであった。牛革をガラス仕上げし、バーガンディーに染め抜いた妖しき光沢。シングルモンクの端正なシルエット。その場で一目惚れした。一期一会とはかくも即断即決のものだ。価格はたったの6千円足らず。破格廉価、驚天動地。まるで砂漠に咲いた一輪の薔薇のようだった。

以来、この靴を酷使無双、愛用専一してきた。日常に、旅路に、冬の街角に。手入れといえば、時折デリケートクリームで撫でる程度。だが、盛者必衰、光陰如箭は万古不易の真理である。
つま先には微細なクラックが生じ、ひび割れもちらほらと出始めた。無理もない。酷暑、乾燥、アスファルト、重力、時間。五つの敵に抗った二十数年。トップリフトは過去に2、3度交換しているが、それもそろそろ限界を訴えていた。

それでも、彼を捨てられなかった。風霜高潔、色艶猶存。
このまま履き潰すのはあまりにも忍びなく、最初で最後の「オールソール」を決意した。

今までセメンテッド製法だと思い込んでいたが、修理職人との談合によりマッケイ製法と判明。意外と芯が通っていた。ただし、ミッドソールを剥がせばアッパーが裂ける可能性があるとのこと。進退窮まる。

本意ではないが今回はミッドを残し、アウトソールのみを交換することにした。

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【BEFORE】
アッパーは肉厚の一枚革でありインナーライナーはない。
G.H.BASSのようなこの色合いとガラス処理した輝きが最大の魅力だ。

基本、ビーフロールローファーは履かない主義。サドル又はフルサドル式が嗜好だ。

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【BEFORE】
ご覧の通りトップリフトは部分的補修も含めて何度か交換した。
写真左側側面には細かいひび割れが見える。
デリケートクリームで適宜保湿してきたが、そろそろ限界も近い。

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【BEFORE】
オリジナルのヒール一体式アウトソールは頑丈で加水分解することもない。
溝もすり減っているが、履こうと思えばまだまだ可能だ。

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【今回はビブラム#9108Vi-Liteで交換する】

好きなソールBEST3を挙げればレザーソールではなく全てラバー(EVA発泡系)となる:
● Vibram GENEPHY #9108Vi-Lite ※超軽量でグリップ力と耐摩耗性にも優れる。
● Vibram #2810GumLite ※ドレス系には最適。クッション性能が抜群。
● Vibram #S1100(=738C) ※溝が深くワークブーツ系、ラギッドシューズにも似合う。
   最近ではワラビーのGTX(=GoreTex)やREGAL 354/355Wでも採用されているようだ。

上記以外にもVibram #2060や#2021も愛用しているが、今回はこのローファーに有終の美を飾ってもらうためにも、そして新たなる試みとして#9108を採用した。

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余談だが、時として滑走必至、鳴音煩瑣なるレザーソールを快く思っていない。
新品であろうとも即座にハーフラバー加工を施すか、オールソールを行うことが常套である。
巷で見かける「トライアンフ150」なるスチールトゥは、鋼鉄の嘴であらゆる床材を傷つける。故に頑固一徹、是非曲直を弁え、あれを忌避している。代わりに、必要とあらば「ラバートゥ」を選ぶ。特に、文化財的価値を有する木造建築や天然大理石フロアに入る際など、鉄製のトゥなどは背徳無道履く者の知性と品位が試される局面である。

オールデンやREGALのチャッカブーツに見られる通称「プランテーションソール」はクレープの柔と、トゥ部のレザーの剛が同居する意匠であり、まさに剛柔併用、理非得失の極致であろう。

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【AFTER】#9108は通称タンクソールに類するのだが、
このパターンの美しさと見るからに柔軟そうな作りが芸術的な域にあるとさえ感じている。

他のVi-Liteは可也ソフトな履き心地となるが、この#9180では適度な硬さを感じるのは
ソールパターンのせいかも知れない。

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【AFTER】ヒール部の高さは約2.5cmとなるので、略オリジナルと同等。
ローファーには最適な高さとなる。

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【AFTER】側面からチラ見するタンクソールの「勇壮」がラギッド感満載で惚れ惚れする。
クッション性も大幅に改善されたので歩行時の疲労度軽減にも寄与することは大きなメリットだ。

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【AFTER】ジーンズにローファーではやや足元に重厚感が欠けるのだが、
タンクソールであればブーツにも負けぬ「上品なラギッド感」で対抗できるだろう。

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これまでも幾度となく述べてきたが、靴の魂はソールに宿る。
これは決して革靴に限った話ではなく、スニーカーにおいても然り。
近年のモデルでは、ソール交換や加工の自由度の幅が格段に広まった。
しかし、物価高騰、補修一つにも費用は嵩む。それでもなお、早め早めの手当てと、自己流の改造によって、好みの意匠に仕上げる悦びは代償不能であり、金では買えぬ満足感が確かにそこにはある。

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修繕とは再生であり、再生とは記憶の継承である。
この足元から、また一歩、新しい時間へと歩き出すことにした。

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(2025/9/21公開)130700       ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2024年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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