“ラジオミール40mmの「検疫物語」”

【Paneristiは既に御存知だと思うが、今回は語源の話】

パネライのラジオミール40mm新作が上市されて早、一年が経過した。
40mm径という絶妙なサイズ感は筆者が最も好むところだ。
正式名称は“Radiomir Quaranta”(ラジオミール・クアランタ)
カラバリはSSケースの場合、白・青・黒・緑の4種類ある。
防水性能は5気圧と言うことなので、
その素性はドレスウォッチと言うことが分かるだろう。

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写真右端は筆者所有の旧モデルPAM00103

ご覧の通り、新型40mmでは多くの点で旧型と異なる。
新型の主な特徴(=旧型との相違点)を例に挙げると、
○ 自社キャリバーP.900搭載の3日巻き搭載
○ PANERAIお得意のサンドウィッチ式文字盤採用
○ デイト窓が3時位置
○ Index9がない
○ 短針にバーが入ることでデザインに統一性を持たせた
○ 裏蓋はシースルーではなくクローズドバック
○ 防水性能は5気圧(SS)又は3気圧(GOLDTEC)、等々

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左が新作PAM01026(GOLDTECTM製、防水機能は30m)、右PAM00103(PG製、防水機能は100m)

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【ラジオミール・クアランタと「検疫」の因果関係について】

前置きが長くなったが本題に入る。
「クアランタ」と言うのはイタリア語で「40」を意味する。
当然ながら、ケース径の40mmから命名されている。
因みに旧型のPAM00103では「Radiomir 40mm」というのが正式名称で、当時のカタログにも記載されている通り2000年代初頭のパネライにはイタリア語のニックネームなどは一切なかった。
今回は販売戦略上、「40mm」とは謳わず、敢えてイタリア語表記の「クアランタ」とすることで、その出自がイタリア海軍向けであることを強調している訳であり、その意図は十分に汲み取ることが出来る。
勿論、今のパネライはヌーシャテル湖を高台から臨む自社工場で生産される歴としたスイス製マニュファクチュールであることは御存知の通り。

その「クアランタ」についてだが、空港や港湾で良く見る「クアランタイン」(=英語のquarantine)という言葉を聞き覚えの方も多いだろう。
これは「検疫」を意味する単語で、コロナ全盛時にはどこの空港でも大賑わいを見せた記憶も未だ新しい。実はこの「検疫」の単語のルーツがイタリア語の「クアランタ」であるのだ。

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説明を簡略化するとこうだ。
中世の14世紀に欧州で大流行した黒死病(ペスト)は、イタリア南部シチリア島からイタリア北部へと蔓延し、更に欧州北西部や北アフリカへと蔓延爆発してゆく。当時の地中海貿易で隆盛を誇った最強の海軍国家であるヴェネチア(以下、ヴェニス)の商人マルコ・ポーロが活躍したのもこの時代であった。
黒死病はその水際対策として、ヴェニスへ入港する船舶は40日間の海上停泊を義務付けられた。つまり、海上での隔離期間を40日間と定めた訳だ。他の地域では30日間の停泊で済む港湾もあったのだが、40という数字はキリスト教の聖書の中でも頻繁に出てくる馴染み深い数字(期間)でもあったことからヴェニスでは40日間と定められたと言われている。

よって、その後、多くの国々でイタリア語の40日間(クアランタ)が語源となって「検疫」としての意味に変容していったのだ。英語では“quarantine”(クアランタイン)と呼ばれ、フランス語では“quarantaine”、スペイン語とポルトガル語では共に“cuarentena”、ドイツ語では“Quarantäne”、ウェールズ語では“Cwarantîn”、デンマーク語では“karantæne”、スウェーデン語でも“karantän”、スワヒリ語では“Karantini”、インドネシア語では“Karantina”、等々と呼ばれている。

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「ラジオミール・クアランタ」には「検疫」という意味は何も関係ないのだが、今回のモデル名「クアランタ」から、人類史上最悪のパンデミックである黒死病の歴史や40日間の海上隔離(検疫)の語源を知ることは「Paneristiとしての品格」にも通じるものだと筆者は考えている。


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左から、PAM01292(SS)、PAM01026(GoldTechTM)、PAM00103(PG)、PAM01294(SS)

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Viva Radiomir Quaranta !!!

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(2024/6/1公開)37666    ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2024年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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