【オマーンの象徴的な市場であるマトラ・スークを散策する】
スーク(SOUQ)とはアラビア語で市場を指す。
この活気あるマトラ・スーク(Mutrah Souq)は、何世紀にもわたってマスカットにおける貿易・商業活動において重要な役割を果たしてきた。オマーンは地理的にも、インド、ペルシャ、アフリカなどとの交易で古くから栄えた貿易港でもあり、スパイス、布地、手作りの製品を物々交換していた。「海のシルクロード」とも言える重要な海上貿易ルートの交差点にある商業の中心地として、オマーンの豊かな経済史においても非常に重要な役割を果たしている。
.




.
【酷暑の昼間を避けて夕方からスークは賑わい始める】
中東の人々は概して「夜型人間」が多い。その理由の一つには、特に長い夏場の酷暑という天候要因が大きいと思っている。
マトラ・スークに足を踏み入れたのは、夕方になってからだった。陽がまだ沈みきらぬ頃、湾の向こうから吹いてくる潮風が、熱気をほんの少しやわらげていた。石畳に影が落ちはじめると同時に、人の流れが濃くなる。観光客の軽装と、オマーンの人々がまとう白やベージュのディスダーシャ(伝統的なオマーンのローブ)。その違いは、僕にはすぐにわかった。他の湾岸諸国で見る服装とは、どこか趣きが異なるのだ。
.



.
【マトラスークの代表的な土産物とは】
オマーン産のフランキンセンス(乳香)は、最高品質として知られており、特に世界遺産に登録されている地域で採取されるホジャリグレードが有名だ。古くから宗教儀式やお香、香水、そして食用や薬用としても利用されており、シトラスのフルーティーさとバルサミックな香りが特徴である。その他、銀製品や宝飾品、スパイスやお香、そして伝統的な工芸品やオマーン式の服飾品が土産品の中心をなしている。
.

オマーンでは祭事用のアクセサリーとして用いられるが、イエメンでは一般男性はこの短剣を
へそのあたりに差している光景が日常的にみられる。正に異文化の象徴。
.


.
スークの中は狭い路地が絡まりあい、香木や銀細工、布地やスパイスの匂いが重なり合って漂っていた。ときおり、アラビア語と英語とが交錯し、値段のやりとりが軽やかに響く。現地の男たちは、誰もが落ち着いた声で商談を進める。観光客は時に強引に、そして時に迷いながら品を手にとる。そんな光景を眺めているだけで、いつのまにか時間は過ぎてゆく。
.



こうした光景は記憶する限りアラビア半島でもオマーン独特のものだろう。

.
外に出れば、マトラ砦が影を伸ばして立っていた。
登ることはしなかったが、下からでも砲台のシルエットと、その横に積まれた弾丸の山が見えた。ドバイやカタールのように鋭く空を切る高層建築ではなく、少し田舎風で素朴な佇まいがそこにあった。穏やかで人の気配に寄り添うような景色が、いかにもオマーンらしいと感じられた。コーニッシュ沿いの店々には、アイスクリームや果物のジュースを求める人々が集まり、海に近づくと潮の匂いが強くなる。夜の訪れがそのまま暮らしのリズムに溶け込んでいくのがわかる。
.


.
【海外での買い物は一期一会の出会いだ。 買わずに後悔するより買って後悔する方が正解だろう】
思い返せば、あのとき木製の杖を買えばよかったのだ。
銀で装飾された柄は、どこか控えめで、しかし確かな存在感を放っていた。あれを手に入れるには、まだ早いと感じていたのかもしれない。今なら、歳を重ねた自分の傍らにあの杖があってもよかったと思う。
スークの雑踏と潮の香を思い出すたびに、そうした小さな後悔が胸の奥で静かに響いている。
.

.
.
(2025/10/20公開)140280 ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。
