【スタイリストという職業】
日本で「スタイリスト」なる職業が正式に登場した時期は定かではないが、今ではファッション業界のみならず、衣・食・住の世界でも多種多様な「スタイリスト」が存在している。
しかし、スタイリストと聞いて僕が真っ先に連想するのは、雑誌POPEYEやBRUTUS創刊の時代からファッションプロデュサーのように大活躍した北村勝彦さん。女性であれば原由美子さんと北村道子さんである。「職業」としてのスタイリストというカテゴリーを創造し、開拓し、新たに築き上げた生みの親が上記の御三方だと思っている。
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その原由美子さんが近著「スタイルを見つける」(大和書房)というエッセイ集の中で愛用時計を写真入りで紹介されている。勿論、腕時計は何本も使い分けていらっしゃると思うが、彼女好みの1本として掲載されたSWATCHの3針式アラビア数字文字盤の写真が我が目に留まった。
正に僕の所有する1本と同じモデルなのでこの機会に紹介してみたい。
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【ファッションとは何だろう】
ファッション女性誌も僕は良く見る。
何よりも、男性誌では見られない配色の妙と着こなしのスタイル、そして巧みなレイヤードが「目から鱗」のヒントとインスピレーションを自分のスタイルにも与えてくれるからだ。
新商品やブランドに頼らずとも、「この手があったのか」、という新鮮な発見は尽きることがないし、理屈抜きで新発見が楽しい。特に女性誌では大胆な色遣いや「差し色」の使い方が非常に参考になる。
毎年の新商品を追い回すことには興味がない。
過去に選び抜いた「旧友」達を如何にしてそのポテンシャルを引きだすことが出来るか。
時には所有する衣類で気になる点を洋裁店で修正・改造をお願いすることもある。
本当は自分でやりたい気持ちもあるのだが、流石に今からミシンを扱う気力もない。
針と糸でボタンを付け替えることや、
ジーンズのウエストをつまみ縫いして調整するくらいが自力における関の山だ。
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日本人は概して年齢と共にダーク調の落ち着いた色彩を好む傾向にあるが、欧米では真逆とまでは言わないまでも、特に女性のファッションにおいては色遊びが非常に上手いと感じている。これはセンスの優劣の問題だけではなく、人種・文化・教育も国によっても異なれば、思考回路や社会制度、更には個々人が生きた時代背景も異なる。住んでいる気候も食事さえも違う。行きつくところファッションとは、様々なる環境で育まれたその人本人の哲学と個性の表現の問題であると思っている。
つまり、今年は何某が流行るとか、高価なブランド服で身を包むとかいう凡庸なレベルを超越して、自分の信念を表現することこそがファッションの神髄であり、ダーク調で決めようと、カラフルに決めようと自身の哲学を表現する限り正解も無ければ不正解も無い。
各自のライフスタイルやイデオロギーが滲み出てくる点にファッションスタイルの面白さ、醍醐味があるのであって、自分なりの「不易流行」を創り上げるプロセスが実に愉しい。
例え周囲の目線が気になろうとも世間の人が皆、パパラッチではないので、本人が思うほど他人を注視していないから過剰に意識する必要も遠慮する必要もない。見栄えのファッションではなく、自身が味わうのがファッションスタイルの基本姿勢だから、自己満足をどこまで追求できるかこそが楽しみの源泉だと考えている。
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自身のファッションやスタイルに「信念」があれば、他人がとやかく言うことはなかろう。
但し、社会的通念上の「ドレスコード」が求められるTPOにおいては相応のスタイルから大きく逸脱するべきではない、というのが僕の考えだ。
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【SWATCHのデザインに一番勢いがあった90年代のIRONY #YGS100】
1995年7月24日に購入したこの時計。
1994~95年AW向けのSWATCH/IRONYというカテゴリーに属する「RED JACK」というモデルである。従来のプラスチックケースとは一線を画す頑丈で存在感のあるSS(ステンレススチール)製のIRONYシリーズ初期の一本であり、ケース径は絶妙なる大きさの36mm。
同時期に一回り小振りな32~33mm径の「GREENGAMMON」というモデルも発売されたのだが、原さんのお好みは36mm径の方だ。今でこそ36mm径は「やや小振りなサイズ」に属するが、30年前の当時はまだまだ「デカ厚時計」の登場以前で、かの永遠の名作であるROLEX デイトジャスト紳士用でさえ36mm径であったのだから。
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この時計の特徴は一目見て印象に残る「特異な書体」のアラビア数字、強烈な押し出し感満載の金色ベゼルと銀色ケースのコンビカラー、更には通称「レイルウェイサークル」と呼ばれるかつて懐中時計で多用されたミニッツindexの採用である。そうした三位一体の特徴がユニークで落ち着いた気品さえも醸し出すところが僕が惹かれた理由だ。竜頭に埋め込まれたイエローストーン(=多分、樹脂製)も金色ベゼルと呼応したお洒落な点だ。
敢えて難点を指摘すれば、このミニッツサークルが即座に判読し難い点だ。
良く見ると分表示の線の太さが毎5分ごとに金色のドットマークで、カウントダウンするように「金ドット→極太棒線→やや太棒線→細い棒線→細い棒線」といった具合に分単位のINDEXが変化するのだ。特に5分単位のINDEXが「金ドット」なのか「極太棒線」なのか、今でも偶に利用する時には混同してしまう「キワモノ」であるが、これも他に例を見ない超個性的な「レイルウェイサークル」だと言えるだろう。
総合的にSWATCHの良さはブランドとしての「匿名性」にある。ブランドをひけらかすことなく、密かにデザインを楽しむ妙。それがこの時計にも良く表れているのだ。
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そしてアラビア数字の書体がなんともおどろおどろしい。
恐らく中世ゴシック様式の書体をアレンジしたものだと思うが、インパクト感満載で味のあるアラビア数字であることも気に入っている。オリジナルの革ベルトは茶色のクロコ型押しであったが、貼り合わせ部分が剥がれてしまったので、現在はブルーのクロコ型押しに換装している。
勿論、SWATCH純正ベルトなので金色のベゼルと美錠とのマッチングも爽やかであり、上々のカラーリングだと密かに悦に入っているのだが、原さんの著書の写真を見ると、彼女も青色(紺色?)系のストラップを装着していることに気が付いた。偶然とはいえ、似たような組み合わせにもちょっと驚いた。
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【著名人の腕時計には特段の興味はないが】
SWATCHの専売特許でもある「バッテリーハッチ」は至極便利だ。
クォーツ時計は全部バッテリーハッチ式にして欲しいとさえ思っている。
丁度電池切れでもあったのでSR920W(=370)を新品に交換した。
著名人や芸能人の時計とかがよく話題になるが、個人的には他人の時計には特段の興味も関心もない。
しかし、今回だけは別物。
大御所スタイリストの原由美子さんと同じ時計をプライベートな空間において選択し、共に長年愛用していることを知り、今まで以上にこのSWATCHに対して敬愛の念を抱いたのである。
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僕は時計好きだが、決して時計には使われない、という気概を持って。
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(2024/9/19公開)57500 ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。

いつも、楽しく拝見しています。
スォッチって、いくつか欲しくなったことがありますが、これも、本当にオシャレですね。
女性誌は、ほとんど見ないですが、さすがtommyさんです。