【世界中で野生のラクダは最早存在しない、というのが長年の理解であったのだが】

ラクダは古来、シルクロードから中東・北アフリカにおいては特に貴重な動物である。
砂漠や土漠などの酷暑環境下においては、その移動手段として大変に重要であった。
寿命が20~30年と長く、砂漠のような乾燥地帯にも強く、いざとなれば食用にもなる。
よって、馬や牛と同様に家畜化されて、主に放牧によって群れ単位で育てられてきた。

サウジアラビアのスーパーマーケットでは時折、ラクダ肉やラクダ乳として売られているが、中々かたくて歯ごたえがある肉なので料理にも手間暇がかかった記憶がある。
また、UAEのドバイでは「ラクダレース」が盛んだが、夏場は気温40℃以上で高湿度の超危険な気候故に、現在ではロボットの騎手が鞭打ちながら一周5~8キロはあろうかという専用のラクダレース場で楽しんでいる。

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「ベドウィン」と呼ばれる砂漠の遊牧民族はこうしたラクダや羊の放牧で今でも生計をたてている。特に断食月のラマダンや宗教儀式の際には羊が大量消費され、時にはラクダもその対象となる。しかし、中東地域内ではその需要を賄うことが出来ないので、大半がアフリカ等から自動車専用船ならぬ、羊専用船で大量に輸入されているのが現実だ。

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【野生のヒトコブラクダは豪州で繁殖していた】

そんなわけで、今のご時世ではラクダのような大型動物の野生種は既に消滅してしまい、
全ては家畜化されている、と自分は想像していたのだが、たまたま図書館で『駱駝狩り』という本を見つけた。
椎名誠さんが1988年にオーストラリアで撮影した写真集である。
これを見ると当時、オーストラリアでは推定3~5万頭の野生のラクダがいると書かれている。

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同書によれば、元来、オーストラリアにはラクダは存在していなかった。
つまり外来種だが、オーストラリア開拓前史において大陸内陸部の探検の為に中東から30頭の「ヒトコブラクダ」を運搬手段として持ち込み、その一部が逃げて野生化したそうだ。そうした野生化して繁殖したラクダを捕まえて家畜としたり、調教したりして今度は逆に中東や北米向けに販売する商売をしているグループに同行した椎名さんの貴重な取材記録でもあった。
現在では野生化したラクダが増えすぎて、その数は一説では100万頭以上とも言われており、生態系や農作物、水源への影響もあると危惧されており、毎年かなりの数のラクダが「駆除」されている。

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【中東・アフリカでは野生のヒトコブラクダは全滅している】

中東や北アフリカ地域に長年慣れ親しんできたが、ついぞ野生のラクダを見ることは出来なかった。調べて見ると、それもそのはずで中東・アフリカでは「ヒトコブラクダ」しか存在しておらず、その野生種は既に全滅しているそうだ。
仮に放牧したラクダが群れから離れても他人に見つかれば即座に捕獲されてしまうので、放牧されているラクダには目印の烙印が押されていることも珍しくはない。人口密度が急速に高まっている中東・アフリカでは放牧したラクダが野生化することは今では有り得ないのが現実だ。

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しかし、調べて見ると中央アジア原産の「フタコブラクダ」には野生種があるという。
今や生息地域も中央アジアの一部やモンゴル高原、新疆ウイグル自治区などに限られており、絶滅危惧種にも指定されていると聞く。つまり、野生の「ヒトコブラクダ」はオーストラリアにのみ存在し、野生の「フタコブラクダ」は中央アジア地域やモンゴル、新疆ウイグル自治区に存在・保護されているのみ、というのが「野生ラクダの現在地」である。

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PHOTOGRAPHED with CASIO EXLIM EX-ZR100
サジアラビアではこのようなラクダ運搬トラックをよく見かける。
種類は全てヒトコブラクダのみだ。

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運搬中にラクダが暴れ出さないようにこうして前足の関節部を縛っている。


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トラックで運ばれたラクダ達はこのように「市場」に集められて売買されている。

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【気候変動とラクダの放牧が抱える将来は】

以下の写真はサウジアラビアの内陸部の土漠地帯で偶然に遭遇した「ラクダ飼い」である。
恐らくアフリカからの出稼ぎ雇われ労働者だろうが、このようにして放牧しているラクダを上手くまとめたり、目的方向へ移動させるのが大きな仕事だ。
夏場の日中は50℃近くにもなる炎天下でのこうした作業は過酷過ぎるので地元民はまずやらない。

加えて世界的な気候変動や爆発的な人口増加問題等が、こうしたラクダの放牧や遊牧民たちの伝統的な生活様式を危機に直面させている。今後、ラクダ放牧の将来を確保するためには、そうした気候変動対策や、持続可能な放牧の在り方の改革を真剣に見直す時期に来ているであろう。

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PHOTOGRAPHED with OLYMPUS E420 + ZUIKO DIGITAL ED 9-16mm F4.0-5.6

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左の御仁の「ワンピース」のスタイルは湾岸諸国に共通する日常着であり正装にもなる衣装だ。
因みにパキスタンでは必ず「2ピース」になるので一目で出身国が分かるのだ。

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ラクダの放牧を取り仕切る仕事は極めて過酷だ。
炎天下では日陰になる場所は殆どない。

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【ラクダと「交通事故」の際の心得とは】

余談となるがオースラリアでは大きなカンガルーが道路に飛び出して交通事故となるケースが少なくないが、中東・北アフリカ、そしてオーストラリアでもラクダと衝突する事故が稀に発生している。しかし、相手がラクダとなると「巨大な岩石」に衝突するのと同様であり、自動車もろとも双方が「大破」して大惨事になりかねない。

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昔、北アフリカのリビアでトリポリからベンガジまで車で移動中、ラクダの首が道路脇の木箱の上に置かれていた。ラクダの頭部は巨大なので、遠くから見てソレと判別できたのだが、どうやらここでソレらの肉を売っているというサインであった。

その当時の現地人に聞いた話では、夜間走行中にラクダが不意に道路に飛び出してきて自動車(=セダン等の乗用車の場合)との衝突が避けられない時には、身を伏せてアクセル全開でラクダにぶつかれば、車の上半分だけがラクダの腹で吹き飛ばされて「オープンカー」に変身するが、人間の命は何とか助かる可能性がある、とのことだった。

実に真顔で言うものだからジョークとも本当の話なのか判断がつかなかったが、ラクダとの衝突事故は実際に起きていたのは事実である。
ラクダへの側面衝突だけは考えただけでも身の毛がよだつ話であった。

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(2025/5/17公開)100420     ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2024年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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1 Comment

  1. 鈴木隆浩

    ラクダの話、知らないことだらけでした。
    いつもありがとうございます。

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