“17年後に鯖江で蘇った「パリミキ」のフレーム”

【原点の精度~時計店から始まった視界】

パリミキ」という社名を聞くたび、僕はいつも少しだけ時間の流れを思う。
この会社の始まりは1930年、兵庫県姫路市。今年で創立95周年を迎えた老舗だ。
当時は「正確堂時計店」という言い得て妙に命名された時計店にルーツを持つ。
それがやがて眼鏡の販売を手がけ、ついには眼鏡専門店としての道を歩み始めた。
1950年には「三城時計店」と名を変え、時計・貴金属・眼鏡を扱い始める。
そして、1960年に眼鏡専門店として現在の礎を築いて行く。

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時間を刻む時計と、世界を映す眼鏡。
そのどちらも、人の生を正確に測るための道具だ。
パリミキはその精度を、時代を越えて守り続けてきた。
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パリミキの旗艦店である渋谷店は場所柄もあり、ポップなムードが色濃く漂っている。

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【ロンドンの午後、リージェント・ストリートにて】

2008年、僕はロンドンにいた。
毎週末には、リージェント・ストリートからジャーミン・ストリート界隈を歩くのが習慣だった。リージェント・ストリートは東京銀座のブランド街のように世界中からの観光客や地元の人々の喧騒で常に賑やかだ。一方、ジャーミン・ストリートは紳士淑女が目立つ老舗ファッション街として、いわば英国トラディショナルの聖地でもある。

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この界隈を散策するのは、僕なりの「定点観察」であり、毎回が確認と発見の時間でもあった。
季節の移ろい、人の足取り、街角の光の角度、そこに集う人々のファッション。
それらが週ごとに少しずつ変わっていくのを眺めることが、
当時の僕にとっての時間との付き合い方だった。
その「観察」の途中、偶然に目にしたのがパリミキの看板だった。
ロンドンの空の下で、しかも超一等地のリージェント・ストリートで、
その文字を見るとは予想外の遭遇であり、少々驚いた記憶が今でも鮮明に残っている。
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「我が愛しのRegent Street」

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【ササの縞、衝動の瞬間】

店に入ってすぐ、ショーケースの中で一際静かな存在感を放っていたのが、
艶消し処理されたこの「ササ」のフレームだった。

べっ甲調の縞模様。
現在では丸眼鏡やボストン、サーモントを中心に愛用しているが、
天地の浅いフォルムはこの当時、随分と執着していたデザイン形状だ。
バッファローホーンの雰囲気をも感じさせる端正でありながら、
どこか無口な佇まいに、当時の僕の感覚は一瞬で引き寄せられた。
理屈ではなく、ただ「これだ」と思った。
衝動買いというよりも、出会うべくして出会った一本だったのかもしれない。
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再生前の状態。元々、つや消し加工されたフレームではあるが、
17年の歳月が全体を曇らせてしまったようだ。

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【風化の手触り~ 17年の痕跡】

それから17年のあいだ、この眼鏡は僕の生活の一部として息づいてきた。
年月は誠実だ。
どんなに丁寧に扱っても、確実にものを古びさせる。
テンプルには部分的に薄い白濁が現れ、アセテート素材特有の加水分解が静かに進んでいた。
だが、古びた姿を見ても不思議と嫌ではなかった。
むしろそこには、自分の時間が刻まれているようにも思えたからだ。
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磨き前のフレームには無数の傷と部分的に「白化現象」が見てとれる。

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【聖地・鯖江へ~ グロッシー磨きという再生】

それでも、もう一度光を取り戻させてみたいと思った。
艶消しから光沢仕上げに加工出来ないかと日本のパリミキに相談すると、
鯖江の専門工房で「グロッシー(光沢)磨き」を施すことができるという。
正確には、恐らく繊維でフレームを磨き上げる「ならし磨き」だと想像している。

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眼鏡の聖地、世界のSABAE。
何万、何十万というフレームを見つめてきた職人たちの手に委ねられる安心感があった。
そして僅か一週間後、僕のもとに戻ってきたフレームは、
まるで静かな水面から顔を出したばかりのように輝きを放っていた。
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聖地「鯖江」については別の機会に触れたい。

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【磨かれた時間~ 新しい視界のなかで】

光を受けたササ模様が、あの頃のロンドンの午後を思い出させる。
それは単なる修復ではなく、時間そのものの再生だった。
眼鏡をかけるという行為は、世界をもう一度鮮明に見つめ直すための小さな儀式だ。
この一本は、その儀式を17年間支え、
そして今、新たな光のなかで僕の世界線を映している。
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オリジナルの艶消しフレームから光沢フレームに「再生」した眩しい一本となる。
レシートの「丸眼鏡」もお洒落だ。
購入17年後に鯖江で蘇った「パリミキ」のフレームと共に晩秋の光を浴びて。

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(2025/11/28公開)155650    ※ブログ内容は適宜、加筆修正しています。

ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2024年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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