【頭上に荷物を乗せて運ぶのは女性だけの風習】

女性が頭上に荷物を乗せて運ぶ「頭上運搬」の光景はアフリカ諸国で良く見るのだが、誰もが見事にバランスを取るものだと何時も感心している。東南アジアでも、昔の日本でも同様な「頭上運搬の風習」はあったと記憶するが、猫背や前かがみでは決して出来ない仕草註1であり、自ずと正しい姿勢となり体幹も鍛えられるのだろう。


もし片手で荷物を持ち上げれば、手首から下肢・肘関節・上肢・肩から肩甲骨・背筋までの筋肉が重力で引っ張られる訳で、身体の片側に重力に反する力が偏ってしまう。両手で運べば前かがみの姿勢となり、今度は歩行に支障をきたす。頭上運搬であれば重力は恐らく身体の中心部に集中出来るとは言え、背骨や骨盤等への負荷も増えるだろうと推察している。

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よって、当然ながら頭上運搬は首への負担も相応にあるはずである。
体調管理や体力と運搬できる距離と時間と荷物の重量にも限界註2が生じることになる。
頸椎の不調や肩凝りなどで疲弊する女性も多いのではなかろうか、などと見る側としては健康上の心配をしてしまう。ガーナでは荷物を「背負う」女性は見たことがなかったので、これもアフリカ大陸の広域で、その長い歴史の中で育まれた「環境的な風習」の一面かも知れない。

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註1『熱帯地方のアフリカの人たちは、前傾した骨盤の為に体型としても頭上運搬が行いやすい』という説もあるようだが、頭上運搬はアフリカ人に限ったことではないので説得力に欠けるだろう。筆者の考えではそれよりも、むしろ代々受け継がれて来た風習と、頭上運搬であいた両手を更に活用せざるを得ないという各国各地の生活や文化に関連する必然性によるところが大きいのではないかと想像している。

註2 頭上運搬の荷物としては「水汲みバケツ」が一番重く、揺れや振動による重心の微妙な流動性もあることから相応の技術と体力が要求されると思うが、その重量は10~20kg程度が限界値だと推察している。余談だが、筆者は過去に一人分の飛行機搭乗運賃に相当する超過料金を支払った26kgのスーツケースを運ぶ時には両手でも持ち上げるのがやっとであり、スーツケース自体も軋んで悲鳴をあげていた。水2L用のペットボトル6本入りケース箱でも12kgもあるので両手で持っても相当に重いと感じる。

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よく観察すると荷物を直接頭上に乗せる人と、丸いリングや巻物等を介している人もいることが分かる。
その荷物の形状によって、頭上運搬の安定性を図る「頭上定着用具」を用いている。

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右側の女性はトップハットのようなフラットな帽子の天辺に荷物を乗せている。
荷物との接点を平面的に広めて荷重を上手く分散してバランスしている好例だろう。

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真横からの一枚だが、この重量バランスは見事というしかない。
やや前傾姿勢ながらもファッションスタイルも含めて、美しい姿勢だと感じる。

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頭上で運ぶのは女性だけ、男性は行わないというのも不思議な点だ。

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女性だけかと思いきや、偶然にも男性の同様なスタイルを発見。
心なしか頭上の荷物は簡素で軽量に見えるが、これは極めて珍しい光景だろう。

荷崩れしやすい頭上運搬時には片手をそえることもあるようだ。 

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アフリカらしい町中の人々の個性的なファッションも見ていて飽きない。

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(参考文献)
『頭上運搬を追って 失われゆく身体技法』
(三砂ちづる著 光文社新書 2024年3月30日初版発行)

本稿の草稿中に偶然、図書館で見つけたのだが、
「頭上運搬」に関する歴史・環境・民族・文化的背景、
そして人間の持つ意識と身体性にまで迫ったユニークな一冊。
「頭上運搬の学術的・身体的な考察」が非常に興味深い。
「文化人類学」にも通じるのこの一冊。ご興味ある方はご一読あれ。

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(2024/10/10公開)60800   
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ゼンマイオヤジ

ゼンマイオヤジ

2024年になっても愛機ラジオミールがゼンマイオヤジを離さない。
でもロレもオメガもセイコーも、フジもライカも好みです。
要は嗜好に合ったデザインであればブランド問わず食いつきます。
『見た目のデザイン第一主義、中身の機械は二の次主義』

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